第50章 *試作品*〜緑間真太郎〜
「…」
「し、真ちゃん!あーん!」
しーん、と沈黙が続く。
沈黙が嫌いなあたしは、チョコを持った手を真ちゃんに向けて突き出した。
ちら、とそれを見た真ちゃんが、珍しく抵抗せず口を開く。
…と、
『ぐいっ』
「きゃっ!?」
チョコを持ってた手の手首を引っ張られて、前へ倒れこんだ。
いつの間にチョコを食べ終えた真ちゃんが、あたしの指をペロリと舐める。
「ひあっ…////し、真ちゃん…くすぐったい////」
最初はチョコがついたとこを舐めるだけだったけど、指の間もされて、変な声が出る。
『チュッ』
手の甲にキスされて、真ちゃんの顔が目の前にきた。
ち、近い…////
「真ちゃん…////」
「そんな顔をするな…」
『期待させるな』
そう呟いたのを、あたしは聞き逃さなかった。
「…好きです。受け取ってください。」
「!?」
ずっと明日渡す事を考えて緊張してたあたしだけど、あっさり渡せた。
チョコを渡された真ちゃんは、驚きで固まっている。
「…あ、ありがたく受け取るのだよ…?」
驚き過ぎて語尾に疑問符が付いていた。
あたし、ずっと真ちゃんに友達としか見られてないと思ってたけど…
「真ちゃんは?」
「…俺もなのだよ////」
『好きだ、香奈。』
それが真ちゃんの本音だった。
*試作品*
お試しのつもりが本番に。
あたし達の、
一日早いバレンタイン。