第49章 *『好き』を込めて*〜宮地清志〜 春様リクエスト
「宮地君…私寝てた…?」
うとうとしながら香奈が起きた。
咄嗟に香奈から顔を離す。
危ね…
「んー…自主練お疲れ様。今日の宮地君もかっこよかったよ。
大好き…」
寝起きだからか、いつもの大声ではなく、か細い声で話していた。
「本当に好きか?」
「うん。」
「…じゃあ、他の奴も好きなのか?」
寝起きで理解に時間がかかるのか、黙り込む香奈。
だけど、あ、と何かを思い出したように呟いた。
「皆に好きって言ったから、ヤキモチ?」
「…んだよ、悪いか////」
今思えば、ヤキモチとか超恥ずい…。
だが、妬いてしまったものはしょうがない、と思った。
「ううん、悪くないよ。あのね、宮地君の好きは…他の人の好きとは違うの。」
そう言いながら、抱きつかれる。
真っ赤になる顔を見られたくなくて、必死に視線を逸らし、手の甲で口を抑えた。
「一緒にいると、ドキドキして…だけど、嬉しいの。緊張するのに安心して、もっと触れたいなーとか、好きだなぁって、心の底から思うんだ。」
しばらくそのままでいた香奈だが、突然自分の鞄の中を漁り出した。
「あ、あった!はい、これ。」
手渡された箱は、思いっきりハート形で、茶色の箱に赤のリボンがついていた。
「…チョコか?」
恐る恐る聞いてみると、香奈は満面の笑みで頷いた。
「バレンタインの!宮地君練習頑張ってたから、差し入れ!」
他の部員には見せてなくて、俺だけのもの。
香奈を、少しだけ独り占めできた気がした。
「なら、もう一つ、いいか?」
「ん?」
微笑みながら首を傾げる姿は、人を惹きつける力があるように見えた。
「俺の事、名前で呼べ。」
拒否権はない、とでもいうように距離を詰めると、頬が朱に染まる。
照れた顔も、俺だけのだった。
「…清志、君?」
自分で呼べって言ったくせに、赤くなる俺。
照れ隠しに、香奈にキスをした。
*『好き』を込めて*
その後食べたチョコは、
すごい美味くて、
香奈の『好き』が込められてた。