第6章 *すれ違いラブレター feat.笠松
『遠野へ
好きなので付き合ってくれませんか。
笠松』
す…き?
すごく簡潔だけど、震える文字から緊張が伝わってくる。
それに驚いたのは、告白されたからというより、私と同じことをしていたからだ。
私も、先輩宛のラブレターを……
そして今、笠松先輩はその手紙が入った靴箱のところにいるはずで。
「あ、あの…笠松先輩?」
「い、言うなバカ、分かってるっつーの。…手紙のことだろ」
こういうことに慣れてないのか、明らかに動揺している。
私だってもちろん、冷静ではいられないのに、嬉しい気持ちの方がずっと上だった。
「好きです、先輩」
「…俺も好き」
そこで会話は途切れたけど、代わりに靴を履き替えて、近づいてくる靴音が聞こえた。
靴音が消えたときには、彼はもう目の前。
「せっかくだし、一緒に帰ってやる」
可愛げなんて少しもないけど、そういうところが好きになっちゃったから。
私は、急いであなたの背中を追いかけた。
*すれ違いラブレター*
すれ違った好きと好き。
気持ちが相手に伝われば、
想いはきっと交わるはず。