第6章 *すれ違いラブレター feat.笠松
人気がなくなった昇降口。
その頃合いを見計らって、私は『それ』を靴箱に入れた。
靴箱にはまだ外靴が入ってて、笠松先輩、帰ってないんだ…と思った。
そうなると、本人に見つかる可能性だってある。
3年生の靴箱の前にいて、何をしてたかなんてどうやっても誤魔化しきれない。
笠松先輩に会いませんように…!
心の中で祈りつつ、その場を離れると、意外な場所で会ってしまった。
想像してた最悪のシチュエーションと、逆のパターンだ。
「…笠松先輩?」
「!!」
私に話しかけられて硬直する、1年生の靴箱の前にいた笠松先輩。
ゆっくりと私と目を合わせるその動きが、錆びたロボットみたいだった。
多分精神的にも、故障寸前。
「わ…悪い……何でもねぇ!」
何が何でもないのか分からないけど、3年生の靴箱の方にダッシュしてしまった。
結局何してたかも訊けなかったし、とりあえず帰ろ…。
上靴を入れようとしたところで、私は動きを止めた。
第三者がいたら、デジャヴだったと思う。
笠松先輩と同様の立ち位置で硬直しつつ、脳はちゃんと動いてた。
…あれ?
靴箱には、私のじゃない白い紙が入っている。
封筒に入ってるし、どう見ても手紙だ。
「…?」
フリーズを解除し、便箋を出して読む。
誰かのいたずらかと思ったけど、中には思ってもみなかったことが書いてあった。