第5章 高尾*あなただけに
「こいつら仲良いなー。兄弟?」
「ううん、全然関係なかった子達だよ」
「へえ。こんなに仲良くなるもんなんだ」
和成くんは三匹を起こさないようにしながら、優しく撫でる。
そして、幸せそうに頬を緩ませた。
それを見てなんとなく思う。
「和成くんって……犬みたいだよね」
「えっ、そう?」
「だって、人懐っこいし、いつも笑顔じゃない? そういうとこが似てるな、って」
それに、犬と触れ合う和成くんは、なんだか見ててしっくりきて。
雰囲気みたいなのもあるのかもしれないな、と思った。
「んー……少し訂正してもいい?」
「? 何を?」
一方で和成くんは、少し複雑そうな顔でそう言った。
私はよく分からずに首を傾げる。
すると──和成くんが、唐突に抱きしめてきた。
「えっ⁉︎ か、和成くん……?」
「いつも笑顔だったりするのはさ……香奈ちゃんだからだよ?」
いつもと同じようで、少し声が震えている。
もしかしたら、言いながら照れてるのかも。
それを可愛いと思えるほど、私も余裕じゃないけど。
「だから……その……ああもう、改めて言おうとすると恥ずい……っ! つ、つまり! 香奈ちゃんがそれくらい好きだってこと!」
抱きしめる力が強くて、ちょっと痛い。
でも、好きだとか、そういう当たり前になっちゃうことをちゃんと伝えてくれるのは、すごく嬉しかった。
「私も……大好き」
少し強めに、抱きしめ返した。
*あなただけに*
たくさんの「私だけ」をくれたから、
私もあなたに、
色んな特別をあげたいな。