第5章 高尾*あなただけに
「んじゃ、お邪魔しまーす!」
「どうぞ」
バスケ部がお休みのある日、彼氏の和成くんが私の家に来た。
今日は天気もあまりよくないから、おうちデートとかどうかな、と思って私が誘ったんだけど。
正直、緊張するし、何したらいいのか分からないしで、楽しむ余裕がない。
「香奈の家、すげー綺麗じゃん! 結構友達来たりすんの?」
「うん、女子はよく来るよ。物買ったりするよりも、お話しする方が好きだし」
「ふぅん。……女子は、ね」
意味深な様子で呟く和成くんに、その言葉が聞き取れなかった私は首を傾げる。
「いや、こっちの話ー。ところで香奈ちゃんは、ペット飼ったりしたことある?」
「あるっていうか……今、犬が三匹いるよ」
「三匹⁉︎ へえ、結構いるねー」
「……何なら、見てみる?」
意外と反応がよくてびっくりする。
けど、やることもちょうどなかったし、これはチャンスかも、と思った。
「ははっ、俺もちょうど見たいなーって思ってた! 読まれた?」
「たまたまだよー」
よかった、和成くんが楽しそうにしてくれるから、少し緊張が解けてきたかも。
ほっとしつつ、私は部屋のどこかにいる犬を探す。
「あれ? 今日はどこにいるんだろ……」
見当たらなくて不安になってると、和成くんが「あっ」と声を上げた。
「香奈ちゃん、こっちこっち」
和成くんの指差す先…机や椅子の陰では、三匹の犬たちが丸まって、寄り添いながら寝ていた。