第30章 *夢か現か*〜黒子テツヤ〜
…自主練が終わって、七時過ぎ。
校門を出ると、そこには…
香奈「あ、テツヤ。練習お疲れ!」
できれば、今は会いたくなかった人がいた。
黒「…香奈さん。誰か待ってるんですか?」
香奈「えへへ、テツヤと帰りたいなーって思って。
…だめ?」
さっきあんな事をした後だから、本当は顔を合わせづらかった。
でも、そんな顔されたら…断れないじゃないですか。
黒「…いいですよ。」
香奈「やったぁー!あ、そうだ!今日保健室に連れて来てくれたの、テツヤ?」
保健室、という単語が出て、ビクッとする。
…いや、見られているはずはない。
香奈さんは、あの時確かに寝てたから。
黒「はい。」
香奈「…そっか。
あのね、もう一つ、聞いてもいいかな?」
僕がいいですよ、と言うと、彼女は深呼吸をしだした。
そして、立ち止まって真っ直ぐに僕を見る。
香奈「…テツヤにキスされたのは…夢じゃないよね?」
黒「っ!?////」
最初は、相当パニックした。
…だけど、今更焦っても遅いと分かったから、
黒「…はい。」
正直にそう言った。
どんな顔されるのか、不安で彼女を見る。
香奈「…ふふっ」
香奈さんは、微笑んでいた。
黒「…どうしたんですか?」
香奈「いや、さ。良かったなって。夢じゃなくて。」
黒「…そんな事言わないで下さい。」
期待しそうになるから。
期待して、振られるくらいなら…
期待も何もしないまま、嫌われた方がいい。
だけど、香奈さんはそんな僕を見て微笑み続けていた。
香奈「…いいよ、期待して。
私、テツヤの事好きだから。」
そう言って頬を赤らめる香奈さんに、
そっと、二度目のキスをした。
*夢か現か*
夢じゃ物足りない。
現実になって欲しいと願って、
今、それが叶ったよ。