第30章 *夢か現か*〜黒子テツヤ〜
黒子side
『どさっ』
黒「…!香奈さん!」
それは、部活中の事。
誠凛バスケ部の唯一のマネージャーの、香奈さんが突然倒れた。
…いや、正確には、突然『眠った』。
香奈さんは、小さい頃からナルコレプシーという一種の眠り病にかかっているらしく、いつ眠るのか分からない。
そして今、休憩時間になり彼女がタオルなどを持って駆けて来た時、突然発作を起こし眠ってしまった。
火「香奈!?」
相「ダメよ、もう寝てるわ」
確かに、香奈さんはすぅすぅと寝息を立てていた。
日「とりあえず保健室にっ…」
黒「僕が行きます。」
日向先輩が香奈さんを連れて行こうとするのを見て、僕はそれを止めた。
…好きな人が他の人に連れて行かれるのは、邪魔したくなるでしょう。
日「…黒子、お前大丈夫か?」
黒「大丈夫です、火神君と違って軽いですから。」
火「黒子…後で覚えとけよ…」
火神君の顔が怖いですが、今は香奈さんを保健室に連れて行く方が先。
僕は香奈さんの膝と背中を持ち上げると、体育館を出た。
…彼女にこんな事できるのも、寝てる間だけ。
それが、僕じゃなくてもいいと思うと悲しくて、でもこうしていられるのは嬉しかった。
保健室。
カーテンが開いているベッドに香奈さんを寝かせて、僕はその場を去ろうとした。
…その時、
香奈「ん…」
キュッと、手を握られた。
振り返れば、僕の手を握ったのは、香奈さんの手。
黒「…っ////」
寝ぼけてるっていうのは知ってます。
でも、そんな可愛い事したら…
黒「…我慢できなくなりますよ?」
『チュッ』
眠っている彼女に、そっとキスをした。
…付き合ってもないのに。
黒「…すみません」
彼女の手は、いつの間にか僕の手を離していた。
僕は、今度こそその場を後にした。