第20章 伏せ魔の時間
矢田『このフロアって…。』
そう。夜な夜な私たちと同い年くらいの子たちが危ない遊びをくり広げている会場だった。
磯貝『さすがにこの人数でゾロゾロ行くと怪しまれるな…。どうすれば…。』
岡野『ここは女子だけの方が怪しまれないから、任せて!奥にある裏口のドア開けたらそこから皆んなで中に入ろう!』
菅谷『でもさすがに女子だけってのは危険だろ。』
カルマ『なら、任せてよ!ね。まぁ。』
『どういう意味?』
私たちは今、会場に客のフリをして進んでいる。
カルマ『ほらまぁ、もっと腕組んで?この会場にいる男女の仲になりきらなきゃ!』
『うっ…。』
周りの男女は怪しい薬やお酒の影響からか絡み合うようにくっつき、目を背けたくなるような事もおかまいなしにしている。
私は意を決して、男のスタッフに見せつけるようにお兄ちゃんにくっつく。
『もっと飲ませてよぉ〜!早くぅ〜!ベッドに連れてってぇ〜。』
甘い声でお兄ちゃんの足に自分の足を絡め、キャミソールからは谷間をチラつかせる。
ビッチ先生に習った魅せるための演技。
本人のみならず、周りの視線をも釘付けにするやり方。
カルマ『…。今はこれで我慢してよね。』
俺はまぁの腰を自分に引き寄せ、もう片方の手を頭にまわし、口付ける。
舌を絡ませ、口づけた唇からは光る2人の液体が溢れる。
お、お兄ちゃん…!いくら演技でもこれはやり過ぎでしょ…!ッ…息ができない…。
ンッ…ンンッ…ンッ!
その様子を苦笑いしつつ桃花やカエデたちが横切り、私たちに魅入る店員の目を盗み、裏口の鍵を開ける。
目と目で鍵を開けた合図を送り合う。
ぷはッ………。
カルマ『さ、そろそろベッドに行こうか。』
真っ赤になり睨むまぁが可愛過ぎてつい意地悪をしてしまう。
みんなの所に戻ると、
磯貝『お前ら…あっこまでしなくても…。』
カエデ『私が顔真っ赤になっちゃったよ!!』
木村『お前らってさ…。』
そう言いかける木村君の声をさえぎり、烏丸先生が言う。
『油断するな。まだどのくらい敵がいるか分からない。』
私たちは再び気を引き締め、展望台にもなっているガラス張りの廊下へ続く道を歩く。