第35章 記憶の中の彼は…。
触手のせいで人格が支配されていたのだろう。
もうあのような凶暴性はなく、もとのまぁの性格からか、俺に対しても多少の遠慮はあるものの、徐々に話しもしてくれるようになってきた。
浅野君には、メールでまぁがここにいること。
少し無理はあったけど、階段から落ちて記憶がないことと、身体は無事だという事を伝えた。
まぁのこと…宜しく頼む。
とだけ返信がきた。
リビングのソファに座るまぁが声をかけてくる。
『あの…さ、名前…。カルマ君だっけ?
でも、私たち、兄弟なんだよね…?前は何て呼んでたの…?』
カルマ『んー。お兄ちゃん…かな?』
『そう…。でも、何で″かな?″なの?』
カルマ『教えてほしい…?』
『うん…。コロ先生を殺したい気持ちに変わりはない。けど…記憶…ちゃんと取り戻したい…。』
うつむくまぁに俺はそっと近づく。
優しく髪を撫でるとまぁは潤んだ瞳で俺を見上げる。
まぁ…。俺、必ず取り戻すからね。
カルマ『じゃあ、俺がまぁの事好きだって言ったら?』
『えっ?えぇぇぇ〜!!?ちょ、ちょっと待って…。私たち、一応兄弟なんだよね?あ、頭が混乱して…。』
真っ赤になってアワアワするまぁがおかしくてつい笑ってしまう。
『ちょっと!何笑ってるのぉ!?』
カルマ『いや、ごめんごめん。あんまりにも可愛い反応するからつい。でも、ほんとの事だよ。
俺はまぁを妹としてじゃなく、1人の女として愛してた。今もその気持ちは変わらない。』
『………じゃあ、私は?私は、カルマ君…いや、お兄ちゃんの事好き…だったの?』
カルマ『それは俺の口からは言えないよ。自分で考えなきゃ。』
そう言ってお兄ちゃんはソファーに座る。
私はそれ以上聞く事はできなかった。