第4章 消せない記憶。~宴~
「……でも?」
その先を言うのを躊躇っていると
右手に柔らかい感触が伝わる。
「やっ、あの。。。」
「早く言わんともうもらうぞ?」
にやっと笑う。
「………昔を…前にいた世界を思い出して
寂しくなって……ちょっと……泣きそうになってしまいました。」
嘘は言ってない。
本当に昔を、
政宗を思い出して
泣きたくなったんだもん。
左手で首飾りに触れながら答える。
「そうか。」
そう聞こえるとふっと右手が解放され、
かわりに頭に暖かいすこしごつごつした信長様の手が触れ、
優しく撫でられた。
「すぐに慣れろとはいわない。
だが、何度もいったはずだ。無理はするなと。
身体だけじゃない、心もな。」
!!!!
一緒だった。
政宗の元に快く送り出そうとしてくれた信長様は
目の前にいる信長様そのものだった。
思わず内側から溢れ出しそうな気持ちを
ぐっと我慢する。
「あ。。ありがとうございます。」
「よし、今宵は遅くなった。しっかり休め。
明日は謁見だ。
忘れるな。」
私を覗きこむようにしていう。
「はい。」
自然に笑って返事ができた自分がいた。
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天主をでた私は
ここに来るときとは違って
あったかい気持ちで部屋に戻ることができた。