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蒼い月

第11章 転校初日


実を言うと吉沢はあんまり反省してなかった。
本来、転入生や留学生には事前にどのようなポケモンがいいか聞いてから渡すのが普通なのだが、吉沢はこの前フェリシアに恥をかかされたことを未だに根に持っており、今回仕返しをしようと考えたのだった。

(ほとんどの女性は虫ポケモンが苦手、又は嫌っている場合が多い...そのすました顔を恐怖に陥れてやる!)

しかし、事態は吉沢が全くもって想像だにしていなかった方向へ。

「うわぁ、可愛い!」

心底嬉しそうな表情と声色で、フェリシアはクルミルを抱き上げた。

「この子、クルミルだっけ?フィー、図鑑取ってくれる?」
「ヒコー」(ラジャー)

フィアンナはバックの中からポケモン図鑑を取り出すと、クルミルに向けた。

『クルミル。さいほうポケモン。はっぱを かみきり くちから だす ねんちゃくいとで まといあわせる。じぶんで ふくを つくる ポケモン』

無機質な音声でポケモン図鑑はクルミルのデータを読み上げた。

「ねぇクルミル。私達と一緒に来る?」
「クリュ!」(うん!)
「そっか、よろしくね」

クルミルを抱きしめたまま、フェリシアは吉沢に向かって頭を下げた。

「吉沢校長、ありがとうございます。クルミルのこと、大事にします」
「あ、あぁ、よろしく頼みます」

吉沢はどもりながらこたえた。

「女の子だよね...じゃあワカバはどうかな?」
「クリュ?」(わかば?)
「君の名前。綺麗な若葉色だから。嫌だった?」
「クリュクリュ、クリュリュー!」(そんなことない、大好き!)
「そっか、これからよろしくね、ワカバ」
「クリュー!」(よろしくー!)

水色のリボンをクルミル、基ワカバの首に巻き終えると、フェリシアはまた吉沢に向かい合った。

「吉沢校長、要件はもうないですか?」
「あぁ、はい」
「じゃ、これで失礼しますね...藤沢先生、行きましょう」
「お、おう」

そう言って校長室を後にするフェリシアの後ろ姿を見ながら、吉沢は悔しそうにハンカチを噛み締めていたとか。
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