第10章 命の灯火
ところ変わってプラターヌ博士の部屋。
「パパ、用事ってなぁに?」
「...実はこれを君に渡したくて」
プラターヌ博士が取り出したのは、フェリシアも何度も見たことのあるプラスチックのケース。
「タマゴ?」
「うん...ちょっと触ってみてくれないかい?」
少し沈んだような声の父の様子を疑問に思いながらもそっとタマゴに触るフェリシア。しかしタマゴに触れた瞬間、フェリシアは凍り付いた。
「何、これ...冷たすぎる...ねぇパパ、このタマゴ、まだ生きてるの?」
震えた声で問いかけるフェリシア。
「多分ね。実はこのタマゴ、フェリシアにってレンジャー協会から託されたんだ...このタマゴを発見した時、すぐ近くにイーブイの遺体があったらしい」
「それって、まさか...」
「密猟の被害にあったみたいなんだ...」
フェリシアはタマゴをぎゅっと抱き締めた。
「このままだとタマゴは死んでしまう。でも、この子を助けられるのは君しかいないって...フェリシア、頼んでもいいかい?」
申し訳無さそうな父に、娘は笑顔で答えた。
「大丈夫だよパパ。私、絶対この子を助けてみせるから」
「ありがとう、フェリシア...」
震える声でプラターヌ博士は愛娘を抱き締めた。
フェリシアは暗い表情のままタマゴを抱えて温室内に戻った。
※以降、副声音で
「...フィアンナ、」
「何、フェリシア?」
「皆を呼んできて」
「...わかった」
ややあってフェリシアの元にポケモン達が勢揃いした。
「皆、ちょっと聞いて欲しいの。このタマゴね、密猟の被害にあって今危険な状態なの。私は、この小さな命を失いたくない。だから、皆の力を貸してくれないかな?」
「「「「もちろん/おう/わかった/了解」」」」
あちこちから聞こえる賛同の声を聞きながら、フェリシアは水色のスカーフを巻き、右目に傷があるドダイトスに寄りかかった。そこへすかさずタマゴに寄り添って来たのは首に水色のリボンを巻いたウルガモスと、首に水色のリボンを巻いたヒノヤコマ。