第6章 小さき炎の決意
「あ、そういえば、」
プラターヌ博士は先程フェリシアに渡されたヒノアラシを抱っこしたままだったことを思い出した。
しかし、ヒノアラシは見知らぬ人間に抱っこされているにも関わらず炎を吐いたりしなかった。
「ヒ、ヒノ...」(す、すごい...)
ヒノアラシの目(見えてるの?なんてツッコミはなしで!)には、フェリシアしか写っていないようだった。
その様子を見ていた白波博士は、フェリシアにある提案をした。
「ねぇフェリちゃん、もし君さえよければなんだけど、この子を貰ってくれないかな?」
「ふぇ?」
「ヒノ?」(ふぇ?)
フェリシアとヒノアラシの口から同時に変な声が出た。
どうやら、二人とも想像だにしていなかったらしい。
「白波先生、彼女にヒノアラシを渡す理由は?」
柳が尋ねた。他の少年達も不思議そうな表情をしている。中には不服そうな表情をしているものもいたが。
「だってフェリちゃん、ヒノアラシの怯えていた理由すぐに見破ったし、あんなに人間を怖がってたヒノアラシが平気な顔してプラターヌ先輩に抱っこされてるし。これって、フェリちゃんがヒノアラシの心を癒すことができたってことじゃないかな?」
「あ...」
「成る程...」
(ぶっちゃけ、ヒノアラシがプラターヌ博士に抱っこされても平気だったのはただ単にフェリシアのバトルに見惚れていたからだけだったりする。)
ここでヒノアラシは今自分を抱っこしているのが見知らぬ人間だということにようやく気づいたらしい。硬直し、プラターヌ博士に火炎放射を浴びせようとした。が、
「大丈夫よヒノアラシ。この人は私のパパなの。君を傷つけるような人じゃないよ」
「ヒノ?」(パパ?)
「そう」
フェリシアはきょとんとしているヒノアラシに目線を合わせ、微笑んだ。
「白波博士、今ヒノアラシがパパに抱っこされても平気だったのは、バトルを見るのに夢中になっていたからであって決して人間が怖くなくなったってことではありません。ポケモンも人間も同じ、心の傷はそう簡単に癒せるものじゃありませんよ」
「おいテメェ、いくらそのヒノアラシになつかれたからって白波先生を馬鹿にするんじゃねぇ!」
「止めろ赤也!」
先程切原と紹介された少年がフェリシアに食ってかかった。