第4章 問題児の真実
「交換相手の新しいマスターは炎タイプが好きみたいで、僕のことをスッゴく歓迎してくれた...でも、最初のうちだけだった」
「バトルで負けたらたくさん暴言を吐かれて、酷いときはご飯抜きだった。前のマスターは負けてもそんなことしなかったから。気付いたら、それがもっとエスカレートして暴力まで振るわれるようになった」
「決定的だったのが、相性のいいはずの虫タイプとバトルした時。やっぱり負けちゃって...今までにないくらいの暴言を吐かれて、暴力を振るわれて、最終的にはボールを壊された」
「『お前みたいな弱いやつ、死んだって誰も相手にしねぇよ』って最後に吐き捨てられた。その後気絶しちゃってたみたいで、気付いたら知らない場所だった。知らない人間が優しく話しかけて来たけど、もう僕は人間を信用出来なくなった。むしろ怖くなっちゃったんだ」
「...成る程ね、だから近寄る人間に火炎放射を浴びせてたのね」
「うん」
「...ヒノアラシ、君は捨てられた時、自分と人間、どっちが悪いと思った?」
フェリシアの質問にヒノアラシは驚いた様子だったがすぐに「自分」と答えた。
「なんでそう思うの?」
「だって僕が弱いから。弱いポケモンなんて誰だって要らないでしょ?」
自虐的なことをいうヒノアラシに対してフェリシアはヒノアラシにとって予想だにしていなかったことを口走った。
「私はそうとは思わないけどな」
「?!」
「だって、最初っから強いポケモンなんていないし、君がバトルに勝てなかったのだってトレーナーの指示が悪かったからでしょ。どんなに弱いって言われてても、鍛え方次第では強くなれる、君は、ちょっとトレーナー運がなかっただけよ」
そう言って笑いかけ、手を差し伸べるフェリシアに、ヒノアラシは何かか壊れるのを感じた。
――人間は嫌い、でも、落ちこぼれの自分に笑いかけてくれた彼女は好き――
ヒノアラシの目に涙が浮かんだ。
気がつけば、ヒノアラシは差し伸べられたフェリシアの手に泣きながらすり寄っていた。
あれほど人間に攻撃し、怯えていたヒノアラシが初めて自分から人間にすり寄った瞬間だった。が、
ドッカーーン
という雰囲気ぶち壊しな爆発音が外から聞こえてきたのだった。