第30章 浪速のお笑い軍団
「え、でも空元気使っても眠りは防げないんじゃ......?」
「その筈だが......」
ブン太とジャッカルの視線の先にはむっちゃ元気ですと言わんばかりに跳び跳ねるイワンコ。
「眠気も猛毒も気合いで吹っ飛ばした?」
「...のようだな」
「トレーナーが規格外ならポケモンも規格外と言うことか...?」
3強も開いた口が塞がらない様子。
「ワイのモットーはやられたらやり返すや!イワンコ、噛み砕く!」
「え、ホントに異常状態吹っ飛ばしたのかあのイワンコ?!」
ジャッカルのツッコミを他所に、鋭く尖った牙がバロンに食い込もうとした瞬間だった。
「バロン、カウンター!」
「しまった?!」
上手く噛み砕くをかわし、イワンコの急所にカウンターを決めるバロン。イワンコは勢い良くフィールドの外へと吹っ飛ばされた。
「......イワンコ、戦闘不能!グラエナの勝ちや!よって勝者、リッカイ学園フェリシア!」
流石に効果抜群の技には耐えられなかったのだろう。イワンコの目がぐるぐるになっていたことを確認し、小石川がコールした。
「アカンかったわぁ~。イワンコ、ごくろーさん」
「バロン、お疲れ様」
「ガウガウ」(お前もな)
「姉ちゃん、やっぱり強いんやなぁ」
「遠山君もね」
「なぁなぁ、もう一回バトルしてくれへん?」
「き~ん~ちゃ~ん?一回だけって約束やろ!」
「うわぁぁん白石ぃ~、毒手はカンベン~!」
「...本当に親子みたいね」
目の前のほのぼのとした光景に、フェリシアは笑った。
「フェリさん、おおきにな、ワガママ叶えてもろて」
「ううん、こっちも楽しかったよ」
「何時かは俺ともバトルしてくれへん?」
「勿論!」
何だか規格外な学校の人達と仲良くなったフェリシアでした。
「...んで幸村クン、例の件はどないしたん?」
「フェリが渡してくれたよ。そっちは?」
「謙也が従兄弟クンに渡す言うてたで......つかフェリさん、『彼』に気に入られたんとちゃう?」
「バトルしたって言ってたけど...何か嫌だな」
(幸村クン、まさか自覚無しなんか...?)
両校の部長達の会話も、白石の勘も、幸村の想いも、そして『彼』の思惑にも、気付く者はまだ誰も居ない。