第22章 稲妻と波動
「ラクライ、ちょっとこのボールに入ってみてくれる?」
「うん!」
ラクライの頭に軽くボールを当てるフェリシア。すると...
カタッ、カタッ、カチッ
ボールが数回揺れ、音をたてて動かなくなった。
と、いうことは...
「え?」
「あ」
「これは...」
「捨てられた、決定、かな」
何とも言えない空気の漂う保健室。それをぶち壊すようにラクライがボールから飛び出してきた。
「なあなあ!俺、なんかこのボールに入ったらぴったりしたような感じがしたんだけど何で?」
ラクライの無邪気っぷりに、思わず皆苦笑い。
「フェリ、どうする?」
「どうするって、決まってるでしょ」
フェリシアはラクライに目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「ラクライ、君さえ良ければ、君のご主人様が見つかるまで私のとこに居ない?」
「え?」
「一緒にご主人様を探してあげる」
「ほんとか?!」
「ほんとほんと」
「ありがとうフェリシア!」
ラクライはフェリシアに飛び付いた。
「ねぇフェリ、このラクライに名前は付けないのかい?」
「うん。モンスターボールが壊れてたって可能性もあるし、とりあえずこの子のトレーナー見つけ出して問い詰めてから考えてもいいかなって」
「成る程...」
早速フィアンナにじゃれついて遊び出すラクライを優しい眼差しで見つめるフェリシア。
その様子を見ながら、柳は先程の出来事をずっと考えていた。
(「波動は我に有り」、か...やはり興味深いな、フェリシアは)
またフェリについての新しいデータが増えると、柳は若干ほくほくする反面、まさか目の前の彼女は波動使いの末裔なのではないのだろうかと疑うのだった。