第20章 母の愛情
「いつでもいいから、またいらっしゃい。また一緒にお料理しましょ」
「......はい」
「なんなら、『お母さん』って呼んでくれてもいいのよ」
「え...?」
その言葉に驚いたフェリシアが思わず顔をあげると、そこには相変わらずの笑顔の真田の母が。
真田の母はフェリシアの目尻に溜まった涙を指で拭った。
「...っ」
その手の温かさに、思わずフェリシアは顔を歪め、真田の母に抱きついた。
その目から涙が溢れていたことは、真田の母とフィアンナのみ知る。
どれくらいそうして居たのだろうか。
「...ありがとうございます、ママさん。ちょっとすっきりしました」
目の辺りを擦りながら真田の母からそっと離れるフェリシア。
「さっきも言ったけど、またいらっしゃい。待ってるから」
「はい...」
はにかんで笑うフェリシア。
(フェリ、相当無理して笑ってるな...)
フィアンナは思った。
「...フェリシア、」
呼び掛けられて振り向けば、そこには幸村達が。
「あ、ごめんね、変なとこ見せちゃって」
「ううん、大丈夫...そろそろ帰ろう」
「うん...ママさん、本当にありがとうございました」
「またいらっしゃいね、フェリちゃん」
「はい」
ペコリと頭を下げ、真田の母に背を向けるフェリシア。
「さあ、帰ろう!」
「明日の練習は朝と放課後共に休みだ。ゆっくり休め」
「明後日の朝練は7:30からだ。忘れぬよう、また遅刻せぬようにな」
「「「「「「イエッサー!!」」」」」」
「じゃあ、解散!」
三々五々散っていく面々。
「フェリさん、またウインディに乗せてくださいよ!」
「赤也、お前朝乗ってきただろい?」
「だって超速くてあんま覚えてないんすもん」
「今日じゃなくても赤也、多分毎朝乗る羽目になると思うが」
「へ?何でですか?」
「赤也、お前さんしょっちゅう寝坊して遅刻しとるじゃろ」
「それは仁王君にも言えることだと思いますが...」
「......」
ワイワイガヤガヤとうるさい中、ずっと沈んだ表情のフェリシア。
それをずっとフィアンナと幸村、そして真田は見つめていた。