第18章 リッカイジム戦
「フェリ、今週の土曜って空いてる?」
始まりは幸村の一言だった。
「土曜?空いてるけど...練習あったっけ?」
「予定表ではフィールド整備があるから無しなんだけど、毎年恒例のジム体験やろうと思って」
「ジム体験?」
「真田のお祖父さんがリッカイのジムリーダーだから、そのご縁で毎年やってるんだ」
「え、リッカイジムリーダーって真田君のお祖父さんだったんだ」
「あぁ。あの人はニッポンのジムリーダーで一番強いとも言われているからね。模擬戦とはいえ、バトルも手加減一切無しだ」
「...どうしよう」
「え?」
俯き震えるフェリシアを不審に思い、顔を覗きこもうとする幸村だったが...
「すっごく楽しみ!」
フェリシアの目はキラキラと輝いていた。
「そんな強い人とバトル出来る機会なんて滅多にないもん!」
「フェリらしいね。なんか安心したよ」
「ところで、リッカイジムって何の専門なの?」
「ドラゴンだ」
「成る程。ありがとう」
「じゃ土曜の朝9時半に学園に集合ね」
「わかった!」
そして待ちに待った土曜。
現在時刻は9時25分。
リッカイバトル部員達は学園の門の前に集合していた。
...二人を除いて。
「赤也はいつも通りだとして...フェリ、遅いな...」
「......」
「リッカイレギュラーと仮部員の身でありながら何をしとるのだ、全くたるんどる!」
ちょっとお怒り気味(つっても怒ってるのは真田だけだけど)の3強。
そこへ...
「ん...?おい、何だあれ?」
ジャッカルの指差す先には土煙。しかもだんだん大きくなっている。そして黒い影。
「あれは、まさか!?」
ジャッカルがその正体に気付いた瞬間、黒い影が空中へと飛び上がった。
「ごめんなさい、遅くなって!」
「アオーン!」(到着だぜ!)
すたっと地面に着地した黒い影の正体は立派なウインディ。首には水色のスカーフが巻かれている。そしてその背に跨がっているのは...
「フェリに赤也?!」
堂々とウインディに跨がるフェリシアと、目を回している赤也だった。
「よいしょっと。センリ、お疲れ様。ありがとね」
「ワォン!」(良いってことよ!)
フェリシアは軽々と赤也をお姫様抱っこすると、ひらりとセンリと呼ばれたウインディの背から飛び下りた。