第12章 決意と躊躇と敵とヒーロー
敵の集団に向かって飛び出していった相澤に、向が悲痛な声を上げ、腕を伸ばした。
「ダメだ向くん、先生に任せて俺たちは避難だ!!」
真っ青な顔をしている向の手を飯田が引き、13号が先導する集団へと引っ張り込んだ。
向は背後ばかり気にしており、いつものような落ち着きが全くと言っていいほど失われている。
(一体、どうしたというんだ…!?)
待って、と叫んだ向の声は、その場にいた誰が聞いても、その言葉に込められた想いの強さがわかってしまうほど真に迫っていた。
色々と聞きたいことがある。
しかし、今はそれどころではない。
そう判断し、飯田は、冷静ではないように見える彼女を安全な場所へと運ぶことだけを考えようと決めた。
生徒たちと13号が出入り口へと辿り着くと、その扉と13号の間に、モヤ状の姿のヴィランが現れた。
「初めまして。我々は敵連合」
「「……っ!!?」」
息を飲む生徒たちに、彼は仰々しい言葉を使って名乗りを上げた。
「せんえつながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは」
そして、今回の奇襲の目的を、さも当然のように言って聞かせた。
「平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」
ここにオールマイトがいるハズですが、何か変更あったのでしょうか?
なんて、自身の余裕を言葉に滲ませながら、霧の敵は言葉をつらつらと並べ立てる。
「まぁ…それとは関係なく…私の役目は、これ」
勝手に話しかけておきながら、急にザワッと雰囲気を変えて殺気を飛ばしてきた敵に反応し、13号が構える。
その2人の間に割って入るように、爆豪と切島が集団から飛び出し、敵へ飛びかかった。
爆破音と、風が分断される音が周囲に響き、その場には爆豪の爆破によって引き起こされた煙が立ち上る。
「その前に、俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
「…危ない危ない…生徒といえど優秀な金の卵」
「ダメだ、どきなさい!二人とも!」
13号の呼び声に爆豪と切島が振り返った瞬間。
敵が自身の霧を広範囲に伸ばし、生徒たちを包み込む。
皆!!と飯田が叫び、近くにいた砂藤と、麗日を担ぎながら急回避しようと動いた。