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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第10章 2人だけの秘密




「で、俺にどうしろって?」


良い匂いが漂っているテーブルを見下ろした後、じっと向を見ながら、「いただきます」と礼儀正しく声を発する。
向も手を合わせて嬉しそうに笑った後、『いただきます』と繰り返した。


『私は別にバレても構わないけどさ…色々困るのは消太にぃじゃない?もう少し他人のふりをお上手にできないものかと』
「お前、俺がわざと「他人じゃないアピール」してると思うのか?」
『いや、思わないけど…無意識だとしたら危ないなと思って伝えただけだよ』
「…へぇ。今日は結局、轟と寄り道して帰ったのか」
『ううん、今日は昼休みの騒動の件以外でも先生方が慌ただしいから、やめておこうって話になったよ。どうして?』


相澤は汁物のお椀を口にしながら、じっと向の顔を眺めた。
向はもぐもぐと口を動かしながら、不思議そうに相澤を見つめ返している。


「…別に」


その後。
向の話題にたまに相槌を打ちながら、食事を済ませた。
彼女は学校に通うようになってから、人に囲まれて、話題に事欠かなく、いろんな話をするようになった。
この家に引き取った頃の、自室にこもって物理学の専門書ばかり読んでいた頃の彼女とは見間違えるほど「本当に」よく笑うようになった。


(…友達ごっこを全面的に認めるわけじゃないが…他の事務所との連携、情報交換が必須なヒーローになる為だとしたら、普通の学生らしい生活も今の深晴には必要か)


今日、出久が、勝己が、焦凍が、鋭児郎が、と次々話題を変えて話す彼女の話題にのぼるのは、男子生徒8割、女子2割だ。
その割合に気づき、若干、我が子を心配する親のような気分になる。


「…お前、ちゃんと女友達いるのか?」
『え、いるよ。でも勝己に怖がってあまり来てくれない』


(一理ある)


ごちそうさま、と向を労って、食器をシンクへ運ぶ。
食器を洗う間、向は会話で止まっていた手と口を動かして、いつも通り夕食をかき込んでいるのが背中越しに伝わって来た。
その悪癖は、何度言っても直らない。












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