第90章 友さえ罵れ
物心ついた時から。
何かに選ばれなかった経験なんて、無いに等しい。
幼稚園の演劇発表会。
わがまま真っ盛りな園児達に、大人が劇で演じる役の希望を取ることはなく。
本人達には何の確認もないまま、それぞれに適役が与えられた。
何ヶ月も前から楽しみにしていたヒーロー劇の主役に選ばれたのは、俺だった。
そうなるように、周りの奴らに牽制だってしといたし、大人にも俺を選ぶようにアピールした。
ただ与えられるのを待ってただけじゃねぇ。
周りより頭使って、周りより努力してた。
だから俺が主役なのは、当たり前ェだと思った。
「デクなんだからあたりまえだろ!」
ぼんやりしてた鈍臭ぇデクは残念な役回り。
その頃はまだ俺の子分だったから、一応慰めてやった。
小学校の役員決め。
挙手して答えるまでもない。
「が…学級委員がいいです」
「えー!勝己がやるって言ってたやつじゃん!」
黙ってたって話が進んでく。
根回ししといた甲斐があった。
「勝己でいいじゃん!」
「そうしようぜ、それでいいよな緑谷!」
「…えっ?」
鈍臭ぇデクはまた出遅れた。
勝負はずっと前から始まってんだっつの。
「…おいデク」
でもまぁ。
クソナードじゃ相手にもなりゃしねぇが、同じ土俵にくらい立たせてやるよ。
「あっ、大丈夫!かっちゃんがいいと思う、僕は他の委員やろうかな…」
「あ?」
戦う前から及び腰とか、クソだせぇ。
「…うっぜぇ、引っさげんならハナっから言うなや」
「ご、ごめん…」
(…戦いも、しねぇなんて)
立ってる者は親でも使え。
持ってるモンは何でも使え。
天性の個性も、センスも、運動神経も地頭の良さも何もかも与えられた、そこについては否定しねぇ。
けど、「俺が選ばれる」、その確固たる自信は。
俺が結果の出ることから一度も逃げない生き方をしてきたからこそ、手に入ったモンだ。
自分でわざわざ擦り傷作って、誰かを蹴落とす罪悪感を知らねぇふりして手に入れてきたモンだ。
選ばれる為に、自分とも、他人とも戦ってきた。
だから選ばれて当然だ
ずっと
そう、思ってた