第89章 身から出た錆
「……なんで…?」
なんで、なんてそんなこと。
わかってたじゃないか。
おまえはそうだ、初めから。
こっち側の人間じゃなかった。
「……なんでだよ…なぁ深晴」
わかってた。
ずっと前から。
諦めろ。
一緒にはいられない。
「……なんで……?」
あぁもう、うるさい。
いいから黙れ。
黙れよ
しっかりしろ、仕事だ
「黒霧、ゲート!」
「先制必縛、ウルシ鎖牢!!」
ヒーローの一団にいたシンリンカムイが木のような腕を伸ばし、即座にヴィラン達の身柄を拘束した。
木を燃やし、消し飛ばそうとした荼毘をグラントリノが一蹴、壁をぶち壊し、アジトへの侵入口を生み出したオールマイトはいつもと変わらない笑みを浮かべ続けている。
「もう逃げられんぞ、敵連合…何故って!?我々が、来た!!!」
続々と現れるプロヒーロー達を眺めていた死柄木は、ひどく不愉快そうに声を発した。
「せっかく色々こねくり回してたのに…何そっちから来てくれてんだよラスボス…」
「怖かったろうに…よく耐えた!ごめんな…もう大丈夫だ少年!そして向少女、協力感謝する!」
「……協力……」
オールマイトのその言葉を、向は否定しない。
ただ彼女は血が滴るほど自分の拳を強く握りしめたまま、死柄木を見つめ続けている。
ひどく血色が悪く、脂汗が滲んだ彼女の表情。
その顔面から彼女の心情をうまく読み取ることができず、死柄木は舌打ちをした。
「…黒霧、持ってこれるだけ持ってこい!!」
「……すみません、死柄木弔…所定の位置にあるハズの脳無が…ない…!!」
「……!?」
「やはり君はまだまだ青二才だ死柄木!」
「あ?」
「君らは舐めすぎた、少年の魂を。警察のたゆまぬ捜査を。そして、我々の怒りを」
オールマイトはそう言って、爆豪と向の肩を強く掴んだ。
向は一瞬だけ、何かを言いたげに口を動かした。
彼女の言葉をじっと待っていた死柄木に、続けざまオールマイトが言葉をぶつけた。
「おいたが過ぎたな、ここで終わりだ死柄木弔!!!」