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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第86章 終わりと始まり






ーーー事件発生まであと7時間




「あー緑谷!!目ぇ覚めてんじゃん!」


合宿が終わってからの二日間、気絶と悶絶を繰り返し高熱にうなされていた緑谷が目覚めた。
ちょうど意識の戻ったタイミングで現れた1-Aのクラスメート達。
彼らから雄英の状況を聞き、目覚めてから、どれだけ自分が長い間放心状態だったのかすら理解していなかった緑谷にも、ようやく事態が飲み込めてきた。
見舞いに来てくれたクラスメート達は、15人。
向、耳郎、葉隠、八百万は未だ同じ病院のどこかの病室にいて、助け出せなかった幼馴染の姿は。
どこにもない。


「…オールマイトがさ…言ってたんだ。手の届かない場所には助けに行けないって。…だから、手の届く範囲は必ず助け出すんだ…」


沸々と湧き上がってくる自身の虚しさに視界を歪め、緑谷が歯軋りをしながら言葉を絞り出した。


「僕は…手の届く場所にいた。必ず助けなきゃいけなかった…僕の個性は、その為の個性なんだ。相澤先生の言った通りになった…!」


入学した初日から言われていたのに。
何も成長しちゃいない。


ーーーおまえのは一人助けて木偶の坊になるだけ


担任の言う通り。
自分の腕が折れていなければ、彼に手を差し伸べることができた。


「…体…動かなかった」


悔しさをにじませる緑谷の言葉に、切島が至極簡単そうに言葉を返した。


「じゃあ今度は助けよう」
「へ!?」


呆けた顔をして見上げてくる緑谷に、切島が答えた。


「実は俺と轟さ、昨日も来ててよォ…オールマイトと警察が八百万と話してるとこ遭遇したんだ。あいつ、脳無に発信機つけてきたんだってさ。だから、それを辿れば俺らも…」


その情報を緑谷と同じく初めて聞いた飯田が、彼の言葉の先を読んで問いかけた。


「…その受信デバイズを、八百万くんに創ってもらう…と?プロに任せるべき案件だ!生徒の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!!」
「んなもんわかってるよ!!でもさァ!何っも出来なかったんだ!!ダチが狙われてるって聞いてさァ!!なんっっも出来なかった!!しなかった!!」









「ここで動かなきゃ俺ァ、ヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!!!」









そう熱く語る友人の剣幕に。
唇を噛み締めていた上鳴は気まずそうに視線を逸らし、俯いた。

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