第83章 モか
ーーー最大、24秒だ
ーーーイレイザーヘッドと戦闘を避けられなくなったら、常に個性を出力したままその「秒数」を耐え忍べ。
相澤と荼毘が再び戦闘を始めてから、開始10秒。
荼毘は向を片手に抱え、右肩に彼女をおぶったまま、物凄い勢いで連撃を繰り出してくる相澤の攻撃を無理矢理凌いでいた。
「…っぶねぇな……」
向を抱えている右側から攻撃されればガード出来ずに打撃をモロに食らってしまうが、相澤は彼女を巻き沿いにするのを迷っているのか、未だ左側からの攻撃しかぶつけてこない。
プロヒーローの足止めはトゥワイスに任せてきたはず。
しかし相澤がここにいるということは、「人手が足りていない」という敵組織としての痛い内部事情を読まれてしまっているのだろう。
作戦現場へ向かう直前。
荼毘は、死柄木からイレイザー対策のアドバイスを受けていた。
ーーー最大、24秒だ
ーーーイレイザーヘッドと戦闘を避けられなくなったら、常に個性を出力したままその「秒数」を耐え忍べ
それだけ。
それだけの情報を与えられただけなのに(何だ、こいつも案外役に立つじゃないか)なんて素直に頷いていた出発前の自分を引っ叩いてやりたい。
(何の役にも立ちやしねえ…)
いざ実戦に迫られ考え直してみると、アドバイスと言うにはあまりに情報がなさすぎる。
USJで会敵した死柄木曰く、相澤が個性を発動し、瞬きするまでの時間は最大24秒。
しかし、その24秒をどう乗り切ればいいのか、我らがリーダー死柄木はアドバイスしてくれなかった。
ーーーその24秒は確実なのか
ふと、荼毘の頭の中にその時交わした死柄木との会話が蘇ってくる。
ーーーうん、確実
ーーーどうやって調べた
ーーーは?いいから、早く行けよ
ーーー何で答えない。答えろ
ーーーうるさいな…アレだよほら…
ーーー………弔調べ
(アイツ、帰ったらぶちのめしてやる)
そう考えた荼毘の体内時計では、確実に相澤の髪が立ち上がってから、既に30秒以上が経過している。
弔調べ、大方雑に頭の中で「いーち、にーい」とカウントでもしてやがったんだろう。
(…脳無呼ぶか)
リーダーの助言は役に立たない。
しかし、もう一つの「イレイザー対策」は健在だ。