第81章 Ⅰの
<A組B組総員ーープロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて、戦闘を許可する!!>
マンダレイの指示がテレパスで味方に一斉に伝えられ、洸汰を抱えて施設へと向かう相澤にも届いた。
彼の一縷の望みに応えるかのように。
奇しくも、もう一つの伝達が相澤の頭に飛び込んできた。
<敵の狙いの一つ判明!!生徒の「かっちゃん」!!向さん!!>
「………!」
(ーーーー急げ…!!!)
相澤がさらに駆ける速度をあげた時刻より、数分前。
ガス溜まりと森へ広がる炎の壁の境目、「敵」から身を隠しやすい狭間で「仲間たち」の作戦遂行を見守っていたヴィラン達が報告をし合っていた。
「あーーダメだ荼毘!!おまえ!やられた!弱!ザコかよ!!!」
「もうか…弱えな、俺」
「ハァン!?バカ言え!!結論を急ぐなおまえは強いさ!この場合はプロがさすがに強かったと考えるべきだ!」
「もう一回俺を増やせトゥワイス、プロの足止めは必要だ」
「ザコが何度やっても同じだっての!!任せろ!!」
「ザコか…おまえも、そう思うか?」
隣に立って、片手で中指を立て、もう片方の手で親指を立てるという相反した反応を見せるトゥワイスとは全く違った方向に向かって、荼毘が声を発した。
その彼の視線につられ、トゥワイスが二人の背後を振り返る。
「………!」
目を丸くしたトゥワイスと、微笑む荼毘の視線の先。
長い髪を風になびかせて冷たい表情をしたままの一人の生徒の姿が、そこに存在していた。
まるで凍りついているかのような彼女の氷の表情。
一切の感情を消し去ってしまったかのような顔つきの彼女は、鋭い眼光をその目に宿してもなお。
浮世離れして美しい。
荼毘が生み出した炎を反射して、青く光っている彼女の儚げな瞳を鑑賞した後、惚れ惚れとするように囁いた。
「…少し待たせすぎじゃないか?」
まるで、デートの待ち合わせに彼女が遅刻して現れたかのような呑気な口ぶりで荼毘はそう囁き、さらに言葉を続けた。
「人手が足りないんだ、手伝ってくれ」
相澤に向けた笑みとは全く違う微笑みを彼女に向けたまま、荼毘はまた独り言のように呟いた。
「…あぁ…おまえは本当に綺麗だなあ」
「可愛いなあ、向…深晴」