第81章 Ⅰの
肝試し組が敵と接触する数分前。
「オレ、実は夢に見るほど肝試し楽しみにしててさ…参加したかったな……合宿の醍醐味…」
捕縛武器に捕らえられながら、チラチラと相澤の様子を伺いつつ、上鳴が口火を切った。
「上鳴ほんとに?それめちゃくちゃ怖くない?」
「いや芦戸、今そういう事が言いたいんじゃなくて。あーっ、夢に見るほど楽しみだったのになー!」
「…あっ、なるほど。えぇーっ可哀想、夢に見るほど楽しみにしてたのに肝試しできないなんてー!」
「上鳴肝試しの夢見るって怖くね?俺も実は悪夢見てた今日」
「いやいや切島、タイムラグかよ!今俺、芦戸と通じ合った直後じゃん、話の流れを断ち切るな…!空気読めって!」
「え?通じ合ったって…あっ!そういうこと!?わかった!」
付き合うことになったんだな、会話邪魔して悪い!
と感じが良いんだかおちょくってんだかよくわからないコメントをした切島に、上鳴がワッとブチギレる。
「おまえの脳は恋愛に染まりすぎなんだよ、切島自重しろ!!俺と芦戸のどこにそんなフラグが立ち並んでましたか!?」
「ははっ、よせやいよせやい上鳴!自重したから…このザマなんだろ…」
「この俺のうっかりさんめ!ごめんって切島、おまえはよく戦ったよ!!」
「え、なになに切島深晴諦めたの?えー詳しく聞かせてー!」
「やめて芦戸、これ以上俺の友達の傷口に強酸塗り込まないで!!」
「グロッ」
((傷口に強酸ってゾッとすんな…))
肝試しに参加できず落ち込んで、突っ込む気力すらない瀬呂と砂藤がそんなことを思った直後。
相澤が一瞬切島を見やったが、何かコメントをするでもなく無言で五人の手綱を引き続ける。
(…あれ?相澤先生今ちょっと同情してくれた?)
ハッとした上鳴は魂が抜け去っていきそうな顔をしている切島の方を向き、爛々とした目で彼を見つめた。
「切島もっと話して!!」
「手のひら返しすごくね?なんなの、強酸じゃなきゃ何傷口に塗ってもいいってわけじゃねぇよ?」
俺が硬化出来んのは皮膚の表面上であって豆腐メンタルは不可なので!!と熱く切島が語った直後、相澤が「暴れんな」と捕縛武器をグイッと引っ張った。