第79章 襲撃者のターゲット
「この子の頭潰しちゃおうかしら、どうかしら?」
肝試しスタート直後。
突如現れたヴィラン連合の刺客達。
ピクシーボブを出会い頭の一撃で戦闘不能に追いやった大柄な男は、長髪にグラサンという一風変わった風貌をしている。
「させぬわこの…!」
「待て待て早まるなマグ姉!虎もだ落ち着け」
飛び掛ってこようと殺気を滲ませた虎を諌めて、二人の間へと足を踏み出したもう一人の敵。
ワニを彷彿とさせる肌を持つ彼は、世間を震撼させた某指名手配犯と酷似した服装をしている。
「生殺与奪は全て、ステインの仰る主張に沿うか否か!!」
「ステイン…あてられた連中か!」
男の容姿を見て、もしやと訝しんでいた飯田が男の言葉に確信した。
そんな飯田を目にして、男は「保須市にてステインの終焉を招いた」と批判めいた口ぶりで飯田をなじった後、言葉を続け、幾重にも重なった刃渡を持つ自分の刀を構え、告げた。
「俺は、スピナー。彼の夢を紡ぐ者だ」
「何でもいいがなあ貴様ら…!その倒れてる女…ピクシーボブは最近婚期を気にし始めててなぁ…女の幸せ掴もうって…いい歳して頑張ってたんだよ。そんな女の顔キズモノにして、男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ!!!」
虎の激昂を皮切りに、睨み合っていた両者が駆け出した。
「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」
「虎!!「指示」は出した!他の生徒の安否はラグドールに任せよう、私らは二人でここを押さえる!!」
皆行って!!
とマンダレイは背中越しに生徒達へと指示を出した後、すぐに「条件」を追加した。
「良い!?決して戦闘はしない事!委員長引率!」
「承知致しました!行こう!!」
施設へと向かう獣道へ、飯田、尾白、口田、峰田が駆け出し、一向に動き出さない緑谷に気づいた向が走り出そうとするのをやめた。
『…出久?』
「……飯田くん、先行ってて」
「緑谷くん!?何を言ってる!?」
「マンダレイ!僕、知ってます!」
『……!』
飯田が止める声を聞かず、緑谷が道から外れた森の中へと飛び込んでいく。
「緑谷くん、戻れ!!」
『天哉、私が見ておく。先に施設へ』
「何!?」
二人とも、待つんだ!!!
そんな飯田の制止も虚しく、二人の友人は暗闇の中へと姿を消した。