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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第75章 一文字異なる



ズボッ!と両手をヤンキーのようにポケットに突っ込んで、ガンを飛ばしてくる爆豪に。
珍しく切島が応戦する。
突然始まった友人達の罵り合い。
向は眉間に深いシワを寄せ、睡魔に連れ去られようとしていた意識を無理やり引き戻した。


「彼氏じゃないくせに」


なんて切島が口にしてしまうあたり、何かフラストレーションが溜まっているのだろう。
そう周囲の生徒達も解釈したのか、掴み合いに発展してしまいそうな二人を「まぁまぁ」と落ち着かせるのを手伝ってくれる。


「深晴、個性使ってこいつら引き剥がしてくれよ!」
『あぁ、その手があったね』


向が上鳴の提案を採用し、二人に片手を向けた視界の隅で。
遠巻きに生徒達の様子を伺っている洸汰と目が合った。
ふいっと顔をそらして立ち去っていく洸汰を眺めて。
疲れも加わり、向が一瞬ぼんやりとしてしまった直後、訓練時間から唯一ずっと彼女と一緒だった飯田が肩を叩いてきた。


「向くん!カレーだ、良かったな!」
『…天哉、そのくだりもうやった』
「ん?」


どういうことだ、と飯田が腕を縦振りしながら追求して来ようとするのと同時。
切島と爆豪の間で腕をめいいっぱい伸ばし、身体を震わせながら喧嘩を押しとどめていた上鳴が叫んだ。


「深晴ー!!早くこいつら引き剥がしてーー!!!」
『あっ、ごめん』
「なんの騒ぎだ?ムッ!爆豪くん切島くん!じゃれていないで早くカレー作りを始めよう!!」
「あァ!?言われなくても作るわ!!」
「良い姿勢だ、爆豪くん!」


世界一旨いカレーを作ろう皆!!
とクラス全体に号令をかけた飯田の声に、切島がようやくハッとして。
完全に殴るつもりで掴んでいた爆豪の胸ぐらをパッと手放した。


「おぉ……わ、悪りぃ」
「あァ!?」
「言いすぎた。ごめん」


ひどく申し訳なさそうに。
切島は、視線を泳がせる。
爆豪はそんな彼を怒鳴り散らすことなく、荒々しく舌打ちをして、そっぽを向いた。


「ほらー作れ作れー!」
「カレーだカレーだぁ!!」


炊事時間開始から10分経過。
本当に三十路を越した大人なのかと疑わしいテンションで、ピクシーボブとラグドールが炊事場を駆け回り続け、「包丁使ってる人の周りを走らないの!!」とマンダレイに説教を食らった。

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