第8章 キミに近づきたい
校門と校舎の間にある、三本並んだアーケード。
放課後、訓練の反省会をするというクラスメートたちに断りを入れて、早めに校舎の外へ出た。
一番校門に近いアーケードの柱にもたれかかって、彼を待っていると、その彼を追いかけてきたらしい緑谷と、引き止められた爆豪の会話が聞こえてきた。
「俺はここで、一番になってやる!!!」
震えている彼の声を、初めて聞いた。
彼もそんな声を出すのかと、自分の耳を疑いたくなるほど驚いた。
だから、なんて話しかけようかなんて、勝手に待ち伏せしておきながら、そんなことを悩んでいた向と、爆豪の赤く潤んだ目が合った時。
『……あ』
「……!?」
これ以上ないほどに、思いつく限りの罵声を浴びせてくる彼に手を向けて、罵ってくるのを制止して、とりあえず希望を述べてみることにした。
『勝己、寄り道して帰ろうよ』
「…………………あ?」
『…んーと、どこでもいいけど』
「どこもいかねぇよ失せろ」
『…ですよねぇ』
足早に歩く彼と、一定の距離を保ちながら駅へと向かう。
ついてくんじゃねぇよ!!と怒鳴り散らされるかと思ったが、案外爆豪は何も言わずに歩き続ける。
「てめェ」
『ん?』
爆豪が立ち止まり、振り返った。
バチッと視線が合った後、爆豪がまた踵を返して歩いていく。
何か話したいのかと、向が爆豪の隣に並ぶと、彼は一度向を見やった後、もう怒鳴る気力すら今日は残っていないのか、珍しく罵声を浴びせてこなかった。
「ハズレだな」
『は?』
てめェ、ハズレだな。
文脈的にそうなってしまうが、そう言った爆豪の様子はいつもとは違い、「馬鹿にしてやろう」といった嫌味な態度とは程遠い。
むしろ、返答を待っているかのようなその視線に、向は一瞬『失礼にもほどがあるだろ』と言い返そうとした言葉を飲み込んだ。
『……ハズレっていうのは?』
至極、冷静に。
彼の意図を汲み取ろうと、確実に足りていない言葉を補ってくれるように促す。
「…ほぼ何もしてねぇじゃねぇか」
『…おぉ、それで?』
「………あ?それでってなんだよ」
『うん、それで、私は組む価値のないハズレだって言いたいの?』
「は?」
爆豪の目がみるみる釣りあがっていく。
その反応を見て、向は言葉を続けた。