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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第72章 見て見ぬフリ




『…!』


女子部屋からジャージの上を持ち出して、濡れていた制服の上だけを着替えて出てくると。
階段のすぐ側に、爆豪が立っていた。


『…勝己?夜ご飯もういいの』
「…遅えから呼びにきてやったんだろ」
『え、食べてないの?ごめん』
「は?勘違いすんな、クソモブ個性のてめえを待つわけねえだろ」
『あぁなんだ、よかった』


濡れた髪を後ろで縛り、『いこ』と笑いかけてきた彼女が横を通り過ぎようとして。
爆豪は向の手首を捕まえて、彼女を見下ろした。


「……風呂、あがったら」
『…ん?』
「行く」
『………』


どこへ、と問いかけるのをやめて、向は少し首を傾けた。


『……女子部屋に迎えに来るってこと?』


ハードル高くない?
そう問いかけてくる彼女に「高くねえわ」と返事を返し、爆豪が手を離して歩き始める。


「弁明があんならそん時話せ」
『……!』
「てめェが馬鹿みてェに叫んで顔面から無様に落っこちた理由をな」
『…無い場合は?』
「俺の手を煩わせた責任取らせてやる」
『責任って…そんなにお金持ってきてないよ』
「テメェはどうしようもなくひねくれてんな、何度言わせんだ!」


んなもん要らねえんだよ、と。
階段で振り返った爆豪と、一段高い所に立っていた向の目線が合う。
睨みつけてくる友達に、向は何を要求されているのかすぐに思い当たってしまった。


『……話せないこともある』
「…話せる分だけ話して、俺が満足しなかったら覚悟しとけよ」
『横暴が過ぎない?私確実に女子部屋にいた方が安全だよね』
「知るかバァカ。こっちはテメェが…」








心配で、食事どころじゃなかった。
だから、せめて目の届く所に置いておこうと。
迎えにきた。











『……こっちは、テメェが?』
「……っテ、メェが……」


視線を逸らし、口ごもる爆豪。
向はそんな彼を見つめて。
心配かけてごめんね、と困ったように笑った。


「…っ心配なんざしてねえよ!!!」
『そうなの?それは良かったです』
「あァ!?」
『心配されても多分私の危なっかしさは変わらない気がするから』


心配、してくれない方が良い。
彼女はそう言って。


『だから勝己と居るし』
「………!」


そんな言葉を付け足した。

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