第67章 フライング夏休み

「プールを使って体力強化か…！さすがだね峰田くん！学校なら個性が使えるし、訓練にもってこいだよ」


なんのアポもなく自宅まで押しかけてきた二人の誘い。
しかしその内容を聞き、一考した緑谷は自宅での訓練を変更し、プールを使った体力強化に1日を費やすことに決めた。
雄英高校にある屋外プールの更衣室。
着替えを終え、改めて峰田の発案を褒め称えた緑谷に、上鳴と峰田が「チッチッチ！」とずるい笑みを浮かべて言葉を発した。


「俺たちゃヒーロー科だぜ…？」
「更に向こうへ！！プルスウルトラさぁあ！！！」
「ウルトラー！」


(真面目な緑谷を誘って正解だったな峰田…！？)
(オイラと上鳴だけじゃプールの使用許可が下りないかもだかんな…！)
(ところで…アレは大丈夫なんだろうな…！？)
(もちろんだって…！オイラ聞いちまったんだよ…！)


声もなく、至極真面目な顔でアイコンタクトを取り続ける二人の間、個性もへったくれもない欲望をエネルギーとしたテレパシーが交わされる。
期末テストが終わった後。
峰田は女子が集まって、夏休み開始二日目、本日。
プールで日光浴をして遊ぼうなんて予定を立てていたのを耳にしていた。


(普段とは違う女子の新たな魅力を見つけてやるぜ…！)


急によだれを垂らし始めた峰田と、鼻水を垂らし始めた上鳴に緑谷が「うわっ、どうしたの！？」と驚いた直後。
二人がにやけ顔のまま更衣室から飛び出していく。


「走ったら危ないよ！」
「うるせぇ緑谷！！！オイラのリトル峰田はもう我慢の限界なんだよ！！！」
「あぁあ早く痺れちゃいたい！！早く早く早く早く！！！」


理解不能な言動を繰り返す二人がプールへと辿り着いた瞬間。
視界に飛び込んできたのは、お手本のようにプール帽を目深に被り、度入りのゴーグルをしっかりと着用した飯田の半裸姿だった。


「遅かったじゃないか！」


緑谷の注意も虚しく、濡れたプールサイドで激しく転倒した二人が見事に顔面からスライディングし、綺麗に飯田の左右を通過していく。
信じらんねぇ！！といった様子でガバァッと身体を起こした峰田の視界に、プールサイドで準備運動をしている暑苦しい野郎どもの姿が映り込む。


「おいおいおい、なんでお前らがここにいんだよ！？」


叫びに似た峰田の問いかけに、後からプールへ出てきた緑谷が答えた。