第66章 返答は、また後日
「信念なき殺意に何の意義がある」
ヒーロー殺し。
ただの犯罪者。
俺と何も変わらない。
そのはずだ。
なのに、俺に向かって偉そうにご高説を垂れてきやがった。
(…見てみろよ、ヒーロー殺し)
人が溢れるショッピングモール。
大多数の人間は対岸の火事とすら思っちゃいない。
どこで誰が。
どういう思いで人を殺そうが。
民衆はへらへら笑って生きている。
「うっわコレ良いのかよ…!」
「ヒーロー殺しのマスクだ!ぜってー問題になるっしょコレ」
「超不謹慎じゃん!」
「ハハハかっけえ!」
一方で。
おまえの思いとはおよそ程遠いところでおまえのシンパが生まれてる。
何なんだ?
やってる事は同じだろう。
俺も、おまえも。
結局気に入らないものを壊していただけだろう?
何なんだ。
一体、何が。
視線の先。
見覚えのある後ろ姿を見つけ、立ち止まった。
(…あのガキ…)
いつもいつも、邪魔をしてくるあのガキの名前はなんていったかな。
「…おー、雄英の人だスゲー!」
まぁとりあえず、ここで会ったのも何かの縁だ。
インタビューでもしてみよう。
今日は時間に余裕があるし、機嫌もそこそこ良い。
「サインくれよ」
「へ!?」
「確か体育祭でボロボロんなってた奴だよな!?」
素っ頓狂な声をあげたその子どもの名前が、「緑谷出久」だと思い出し。
彼の肩に腕を引っ掛け、笑いかけた。
「んで確か…保須事件の時にヒーロー殺しと遭遇したんだっけ?すげえよなあ!」
「よくご存知で…」
(…ご存知も、なにも。おまえが勝手に保須にまで現れたんじゃないか)
「いや、本当信じらんないぜ。こんなとこでまた会うとは!ここまでくると…何かあるんじゃって思うよ。運命…因縁めいたもんが…まあでもおまえにとっては、雄英襲撃以来になるか」
ーーー彼は、オールマイトとは何も関係ない
そう聞いた時の言葉を思い浮かべ、緑谷の首をうなじから鷲掴んだ若い男……死柄木弔は、薄い笑みを浮かべ、緑谷を誘った。
「お茶でもしようか、緑谷出久」