第62章 悪くない
「それじゃあ演習試験を始めていく」
演習試験、当日。
校内にあるバスターミナルに集合したのは、1-Aヒーロー科の生徒たちだけではなかった。
「この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたけりゃみっともねえヘマはするなよ」
試験について説明を始める相澤の周りには、雄英1学年の教師勢が立ち並んでいた。
その数、総勢10名。
「先生多いな…?」
「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々わかってるとは思うが…」
「入試みてぇなロボ無双だろ!!」
「花火!カレー!肝試ーー!!」
相澤の言葉を遮って、対人では個性の調整が面倒な上鳴と、芦戸が早々と合格を確信したような発言をし始める。
試験の説明を中断させた二人に、彼の怒声が飛ぶのでは、と周りの生徒たちがハラハラした矢先。
聞こえてきたのは、相澤が発したにしてはあまりにファンシーすぎる、高らかな声だった。
「残念!!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」
突如、担任の首元から現れたりんご5つ分サイズの根津校長。
彼は毎年恒例のロボ演習の取り止めを告げ、その代わりとなる今回の期末演習試験の内容を発表した。
「これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ!というわけで…諸君らにはこれから二人一組で、ここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」
「尚、ペアの組と対戦する教師はすでに決定済み。動きの傾向や成績、親密度…諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表してくぞ。それと、うちのクラスは21人。最初の組だけは三人一組、よく聞いとけ」
まず、轟と、八百万。
そう言った後、相澤は爆豪と轟の間に立って話を聞いていた向と、目を合わせた。
「…向が三人チームで、俺とだ」
ニッと笑って、相澤は最初の組のチーム発表を終える。
向は左隣に立つ轟を見上げ、轟は向を見下ろした。
無言で睨みつけてくる爆豪と、轟の目が合った直後。
「そして緑谷と、爆豪がチーム」
「デ…!?」
次いで発表された二組目に、爆豪は驚愕の声をあげた。
「で…相手はー…」
「私が、する!」
またしても横槍を入れられ、不服そうな顔をする相澤の前に進み出て、名乗りを上げたのは。
No.1プロヒーロー、オールマイトだった。