第56章 損する性格
新事実発覚。
あんなに学食でカレーを連発している向が、カレーを好きじゃないと言いだした。
「……マジで?じゃあなんであんないつもカレー選んでんの?」
『ちょっと気になっちゃう』
「でも好きじゃねぇの?」
『うん、大して』
「マジか」
謎は深まるばかり。
本当に向って、よく掴めない。
気分屋なところも、なんだか浮世離れしてミステリアスなところも。
「じゃあ、カレーじゃないもん食べるか?轟と緑谷は?」
「…なんでもいい」
「あ、僕も特に好き嫌いないから、みんなが食べたいものでいいよ!」
おいおいなんだこの主体性のなさ。
主体性のなさっていうか、協調性がありすぎんのかな。
それなら納得。
向以外のあの二人、いつもわがまま言いたい放題だもんな。
「じゃあー…そうだな。俺と向明日お好み焼き食うからさ、それ以外でちょっと候補出してみて!」
「二人で行くのか?」
轟、食いつくとこはそこじゃない…!
「いや、爆豪と上鳴も一緒」
「…そうか」
「そうだなぁ…轟くんはいつも蕎麦だけど、今日も蕎麦の気分?」
「…いや、別に。そこまでこだわりはねぇよ」
「轟っていつも蕎麦なのか?」
「ああ」
「好きなの?」
「…まぁまぁだな」
まぁまぁ好きで、毎日同じもの食ってて飽きねえのかな。
毎日食うなら、やっぱり好物だよな。
でも向は違ったのか。
「向、カレーじゃなかったら何食べたい?」
『ん、ここって何があるの?』
「オムライスとか、イタリアンとかマックとか大抵なんでも」
『じゃあ行ったことあるからマック』
「まぁ映画で結構金飛ぶし、マックあたりが妥当かなぁ」
マックに並ぶ轟ってあんま想像つかない。
緑谷は普通に行ってそう。
そういえば、向ってなんでマック行くの最初あんなに喜んでたんだろう。
カラオケ行った時も、すげー嬉しそうだった。
明るくて話しやすいのに、あんまり中学までは遊びに出歩いたりしなかったのかな。
モテそうなのに、デート行ったことなかったのかな。
(いや、俺向のこと考えてばっかじゃん)
気づけば、向を見ながら考え込んでしまっていた。
ダメだダメ、今日はみんなで楽しまないと。