第47章 寝ても覚めても
夜、ベッドに横になって一日の出来事を振り返った。
結局、飯田と2人で話をすることはできずに、緑谷、麗日、飛び入りで参加してきた轟を交えて5人で帰った。
爆豪は少し昼休みの終盤から機嫌を直したかと思いきや、結局複数人で帰るらしい向を見て、またブチギレて帰っていった。
(……勝己に申し訳なかったかもしれない。そして、焦凍にまだ返信をしてない。天哉は私の想いがどこにあるかわかってるって言ってたけど、それは一体誰のことを指してるんだろう)
部屋の扉がノックされた音を聞いて、向はゆっくりと目を開けた。
『…どうぞ』
帰ってきてからも、どこかぎこちなかった相澤が部屋の扉を開けた。
もう寝るつもりだったのか、リビングや廊下の電気が漏れてくることはない。
扉の入り口に立ったまま、深晴、と呼びかけてきた彼に、向は返事を返した。
『…消太にぃももう寝るの?』
「ああ」
横で眠りたい。
暗闇でそう告げてくる彼に、向は『えっ』と焦った声を出した。
フローリングが軋む音がして、真っ黒な人影がベッドに近寄ってくる。
急に速さを増した鼓動を落ち着かせながら、向が声を発した。
『まっ、まって』
「何もしない」
『いや、わかってるけど。ちょっと心の準備が』
「何もしないのに、心の準備が必要か?」
立ち止まらず近寄ってくる人影に、自分の赤面している顔が見えているはずもないのだが、それを見られたくない一心で、向がひとまず背を向けた。
(待って、どうした急に、今日そんなにイラつかせたかな!?嫌だったのかな、そうかもしれないけどでも急にそういう展開はーー……)
ゴソ、ゴソと。
布が擦れ合う音がして、次いでジッパーの音が聞こえてきた。
なんだか、彼との共同生活を続けている向にはその物音で、全てが理解できてしまった。
向はちょっと彼を責めるような目で寝返りを打ち、先ほどまで立っていた場所から忽然と姿を消した人影を、ベッドの縁から見下ろしたフローリングの上に発見した。
『……それ横で寝るって言わない、床で寝るって言うんだよ』
「…どこでもいい」