第5章 先生としてどうなんですかそれは
一人きりの帰り道。
相澤からの封筒を開けると、そこには掌サイズのメモが1枚と、五千円札が1枚納められていた。
<病院の帰りに好きなもの買って帰れ>
『………。』
それだけ書かれたメモの意図を想像し、あぁ、なるほど、と声に出して納得する。
テスト結果を加味してか、怪我を労ってのことか、おそらくそのどちらもなのだろう。
近くの脳外科外来を携帯で調べながら、ぼんやりと見慣れない街中を眺めて帰る。
『…はぁ』
まだ学校を出てほんの数分も歩いていないが、ひどく身体が重く、気力がわかない。
リカバリーガールの治療効果で鼻の痛みと熱はもう全快しているが、それと引き換えの倦怠感が身体に残っていた。
(…あ、マズい)
それに加えて、無理やり個性を使い続けた結果の目眩がまだ抜けない。
足下がもたつき、ふらついた。
ーーーマズい、転ぶ。
自分の身体がコンクリートに打ち付けられる瞬間を想像し、慌てて目を瞑った。
「大丈夫か?」
『……あれ』
後ろから心配して駆け寄ってきてくれていた切島が、向が倒れる直前、手を伸ばして支えてくれた。
自分のお腹に触れている切島の腕をじっと見た後、きゅっと目を瞑ってしまったまま動かない向を見て、切島はまたあわあわと問いかける。
「おいおい、大丈夫かよ?どうした、目眩か?」
『……目眩です……』
「マジか、ちょっと座れるとこ…あっ、あっちの椅子まで行けるか?」
切島は道の脇に佇むオープンカフェの幟を見つけ、そこまで向を支えて歩かせることにした。
屋外に設置されたテーブルに突っ伏すような体勢で、向はイスに腰掛ける。
低く唸っている彼女の背をさすっていると、中から店員が出てきた。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「あっ、えーと……じゃあ、さっぱりした飲み物ありますか?」
「さっぱりしたものですと、フレッシュオレンジジュースか、フレッシュグレープフルーツジュースはいかがでしょうか?」
「じゃあそれ1つずつで!」
「かしこまりました」