第5章 先生としてどうなんですかそれは
職員室に呼ばれ、ノックして中に入ろうとした時、「Hey、そこの女子リスナー!」という特徴的な呼び方で、耳に残る特徴的な声に呼び止められた。
『…私ですか?』
「Yeah!悪いな、今年から雄英の職員室は生徒立ち入り禁止になったんだ!」
『え?立ち入り禁止ってなんで』
「情報漏洩を防ぐ一環でね!誰に用事だ?」
『…あぁ、じゃあ…相澤先生をお願いします』
「おっ、Youはあいつの生徒か!」
ちょーっと待ってな!とハイテンションで職員室に入っていくプレゼント・マイクに、向は少しだけ目を輝かせた。
(……背、高い)
ホクホクと胸が温まるような感覚に身を包まれながら、廊下に立ったまま相澤を待っていると、数十秒もしないうちに相澤が職員室から出てきた。
「これ、親御さんに渡せ」
『…なんですか?これ』
頭の一部分を怪我させておいて、学校側から連絡をしないわけにはいかない。
それらしいことを口走って相澤が向に渡した封筒の中身を確認しようとすると、もう一度、「保護者に見せろ」と開封を制止された。
『……あ、わかりました』
学校で開けるな、という意味かと理解し、鞄にしまうと、相澤は少し遠くに視線をやった後、問いかけてきた。
「…見た目戻ったっぽいが、リカバリーガールはなんて言ってた?」
『あぁ、帰ってから病院行けって』
「そうだろうな。結果分かったら一報寄越せよ」
『了解です』
「じゃ、また明日」
『はい、また明日』
言いながら、向は面白くなってきてしまったのか、元通りに戻った顔をくしゃっとさせて、クスクスと笑いながら立ち去って行った。
その背が見えなくなるまで見送って、職員室に入ると、待ち構えていたかのように、プレゼント・マイクが満面の笑みで仁王立ちしていた。
「彼女、1-Aか?」
「あぁ、そうだ」
「ありゃモテそうだなぁ」
「…」
ペラペラと喋り続けるマイクを無視して、相澤は机に戻り、腰掛けた。
「なぁ、また今日も定時帰りか?お前絶対なんか隠してるだろ」
「何が」
「さては」
子猫でも拾ったな?と指をパチンと鳴らし、マイクがニヤリと笑いかけてくる。
相澤は仕事の手を止めて、そんな彼に一度視線をやった後、こう答えた。
「…うちのマンションはペット禁止だよ」