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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第36章 1位の彼と私




「あ」


人で賑わった街角。
現時刻は、午後2時をちょうど回ったところ。
見知った顔を見つけ、2人はそれぞれ違った声をあげた。


『勝己、買い物?』
「……………。」


カーキのカーゴパンツを腰で履き、黒の無地Tシャツの上にジャケットを羽織った爆豪は、目の前に突如現れた同級生の姿に目を丸くした。


『………………やぁ、昨日ぶり』


昨日の帰り際。
ガタガタと震えながら血色の悪い顔をしていた向は、今日はそれなりに血色の良い顔色をして、爆豪を見つめてくる。
彼女は、体育祭以降どのニュースでもピックアップされているほど容姿端麗だと世間に騒がれ、次世代のプロヒーローウワバミかともてはやされるほど、「魅力がある女子」のはずなのだが。
通り過ぎる人々は、爆豪を見て口々に体育祭のコメントをぶつけてきたり、指を指してきたりするというのに、まるで目の前に立つ彼女が見えていないかのような対応だ。
爆豪はポケットに両手を突っ込んだまま、首を傾けて、突如進路に現れた向を見下ろした。
彼女は自分を不思議そうに見つめてくる爆豪の視線の理由に気づいたのか、答えた。


『個性で消してる。勝己にしか見えてない』
「…お前、そんなことできんのか」
『なんか目立ってしょうがないから嫌になっちゃって』


そう言う彼女は、それで街中をうろついていたのかと聞いてやりたくなるほど、まるで自分の見た目に興味がなさそうな格好をしている。
ダボついた無地の半袖白シャツに、煤けた茶色のチノパンを履いた彼女は、まるで。


『ヤンキー?』
「戦時中の苦学生か!」


爆豪のファッションを眺めていた彼女は、そんな自分のことを棚に上げまくったコメントをした。
爆豪はビスッ!と鋭いチョップを向の頭にヒットさせ、彼女の私服に、見たままの評価を下した。
いだっ、と呻いた彼女は計算を途切れさせてしまったのか、パッと周囲の通行人たちの目にとまる。
そんな手を抜きに抜いたファッションに身を包んでいながらも、「あ、テレビよりかわいいー!」なんて彼女が爆豪以外にも認知され始めたのを確認し、「個性で消した」という彼女の言葉は真実だったのだと、爆豪は認めざるを得なくなった。


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