第34章 共に在る為
学生時代。
人並みに恋をして、人並みに経験を積んで、人並みに誰かと共に在ることを望んだ。
初めて出来た恋人は、全てを論理的且つ合理的に考える俺とは似ても似つかない、まるで性格が正反対の同級生だった。
今となっては、なぜ好きになったのかすら思い出せない。
そもそも彼女を好きだったのかすら、10年も時を経た今となっては、覚えてない。
聞こえが悪いかもしれないが、30にもなると、学生時代の記憶なんて全部そんなもんだ。
当時、彼女を特別無下に扱っていたわけじゃない。
むしろ、ずっとこのままでいたいなんて、柄でもないことを考えるほどには、一途だった気がする。
だからプロヒーロー入りをした後すぐに、彼女と一緒に暮らし始めた。
おまえらが一緒に暮らせるわけがない。
自分たちをよく知っている、周りの止める声も聞かず、俺たちは毎日を共に過ごした。
そして、日が経つごとに。
俺たちの関係は、ゆっくりと、死なないように注意を払い続けながら、相手の首を絞め続けるような苦痛なものへと変わっていき。
修復不可能なほど。
瞬く間に崩壊していった。
好きなだけ、愛し合っているだけで。
ずっと一緒にいられると思ったら大間違い。
彼女は、俺にとっては些細なことでこの世の終わりのように感情的になり、喧嘩になるたび、そう言った。
俺は、それでも彼女と一緒に居たくて。
責め立てるような怒鳴り声にうんざりしながらも、何度も反論した。
どれだけ、近しい仲であろうと。
俺たちは結局他人同士。
言ってくれないとわからない。
説明を求めたら、怒鳴り散らす前に、嫌な態度を取って無視する前に言葉を返せ。
何度も、何度も。
その言葉を繰り返し、使い続けて。
ある日、突然。
全てがどうでもよくなった。
もういい、もう十分。
もう十分、傷ついた。
2人の関係に綻びが生じることに、片方だけが悪いなんてことはありえない。
お互いに誠意を尽くして向き合っていたのなら、尚のこと。
一切声を荒げない自分と、いつも、いつまでも怒鳴り散らす彼女との関係に、嫌気がさして。
俺は初めて好きだと思った相手を大嫌いになって、また独りの生活へと戻った。