第31章 同期兼同僚の独り言
こいつは学生の頃からいつも人生つまんなさそうだった。
俺がどんな一発芸をしてみせても、今世紀最大の趣味のマジックを特別に見せてやっても、全てどうでも良さそうな顔をして「へぇ」なんて言葉を返してきやがった。
一匹オオカミどころじゃねぇ。
まだ一匹オオカミの方が、こいつよりも生気に満ち溢れてる。
それが、どうだ。
人間様の、映えある小学生がなりたい職業ランキング1位、プロヒーローの1人に昇りつめたって。
どうにもこうにも、こいつからは執着ってもんが見られない。
教師としてのプライドも、プロヒーローとしてのプライドもあるにはある。
けど、こいつん中でそれは、合理的に生きていく上で必要なものってだけで、なくてもいいけど好き好んで追い求めてるってわけじゃねぇのさ。
無造作に食うゼリー飲料と一緒。
オーケイオーケイ!!
つまり俺が何を言いたいかって?
つまりは、だ。
<<ミッドナイト、止めろ!!!>>
こいつと同期兼同僚を続けてきて。
こんなにこんなに腹から声出すこいつは初めて見たって話。
生徒が危険に晒されたから?
違う、そんなもんじゃない。
俺は、ずっと見てきたんだ。
フィールドからどんな氷壁が迫ってきたって、コンクリートの破片がぶっ飛んで来ようったって。
こいつは目を見開きこそすれ、微動だにしなかった。
なのに、それがどうだい?
個性の許容限度を超えた向が、真正面から轟の氷壁にぶつかる予想がついたんだろう。
その途端、椅子から立ち上がって目ェ見開いてやがる。
(……そうかい、やっぱ、そうかい)
同僚として、うまく言ってきかせる必要がありそうだ。
ぶん殴ってでも正気に戻してやんねぇと、こいつの将来も、向自身も危ねえ。
「……座れよ、イレイザー」
でもよ。
俺は、おまえの同期兼同僚だ。
だから、同期としてはよ。
こう言ってやりてえわけさ。
「……医務室、言ってやれよ」
「…っ!」