第30章 血も凍るほど熱烈に
緑谷に、頭の中をめちゃくちゃにされた後。
向を探した。
おまえが一緒にいてくれる時だけ。
俺は何もかもを忘れて、おまえの声に酔いしれて。
幸福な気分でいられたから。
おまえが俺以外の奴に笑顔を向けるたび。
おまえの姿が俺の視界から消えるたび。
おまえの視線が、俺から外れるたびに、いつも。
いつも、いつも、思ってた。
「…っ止まって、向さんッ!」
なぁ相澤先生。
いつも俺たちに偉そうなこと言っといて。
あんたはどうなんだ?
本当は人に言えないこと、隠してるんじゃないのか。
しっかりしろよ、大人だろ。
身体を霜に覆われながら、それでも轟に飛び込んでいく向。
相澤が声を荒げると同時。
ミッドナイトの制止する声がフィールドに響く。
向は飛び出した身体を止めることのないまま、初めて聞いた「彼」の焦燥に駆られた声に、顔を轟から背けた。
「…っおい……」
それを見た轟は、眼の色を変えて。
「こっち見ろ、向!!!!!」
まるで。
たくさんの鈴が、地面に落下する音がした。
駆け寄ってきたミッドナイトを突き飛ばすほどの、巨大な氷壁を生み出した轟。
会場がどよめき、固唾を呑む。
<<……と、轟……決勝、進出……>>
白い息を吐いて。
轟は、目の前の光景に目を見張った。
彼が生み出した氷壁は、完全に向の身体を飲み込んだ。
「……向……?」
まるで、巨大な宝石の中に向をしまい込むかのように発生した氷の結晶は。
彼女を、氷像のように。
完全に凍て付かせてしまった。
マイクのアナウンスの後、静まり返る会場の中で、轟は遠い耳鳴りを聞きながら。
ゆっくりと、その透明な氷に、片手をつけた。
まるで、精巧に作られた人形のように固まったまま、瞬きも、呼吸すらなく氷に閉じ込められている向を見て、思った。
あぁ
なんて
綺麗なんだろう、と