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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第28章 凍える熱情




「っなら……ならどうして!!」


飛び蹴りをしてくる向に、轟が氷壁をぶつける。
怪我ひとつなく宙に舞い上がった向は高速移動を繰り返し、轟に殴りかかった。
その攻撃を受け流しながら轟が向の手首を掴もうとして、蹴り飛ばされた。
危うく場外になりそうなところで背後に氷壁を生み出し、轟はフィールドを駆けながら、向との衝突を繰り返す。


『……どうして、なに?』


向が片手の掌にプラズマを生み出そうとしたのを見て轟が遠距離から氷結攻撃をしかけ、演算を邪魔した。


「どうしておまえは…っ俺と同じ目をしてる…!?」
『…同じ目って、どんな目?』


向が轟に飛びかかり、また両者の攻撃と衝突が繰り返される。
その戦いの最中、轟は理解し始めていた。








一緒にしないで











彼女は確かにそう言った。
轟のことを「コミックの主人公のよう」と言っておきながら。
そんな簡単に自分を分かったつもりになるなと、轟に対して憤った。


(……どうして)


なぁ、向。
知ったかぶりしてほしくないなら。
どうして話してくれない?
でも、俺もおまえに話さなかった。
今日の今日まで、隠してた。
おまえだけ、責めるなんて。
そんなの都合いいってわかってる。


「……っなぁ、おまえ今なに考えてるんだ…!」


おまえのことがわからない。
ずっとわかった気でいたのに。
言葉なんて、なくたって。


「言えよ、知ったかぶりされたくないなら…!いつも、逃げてばかりだろ!!」








「焦凍ー!!!左側を使えーー!!!」







遠くからアイツの声が聞こえた。
外から聞けば、ただの親から子に対する声援。
でも俺にとっては耳障り以外の何ものでもない。
うるさい、黙れ。
うるさいうるさいうるさい。


「……っ!」
『焦凍』













『お父さん、応援してくれてるよ』














向は、言った。
その彼女の遠い視線に気づいて。
今にも泣き出しそうな。
その取り繕った笑みを見つめて。
轟はようやく、向の心情が理解できた。



(…あぁ、向おまえ…)











俺が、羨ましいのか






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