第26章 モブの隠し事
初めて、女子に何かを奢った。
初めて、女子と2人で寄り道した。
ただの偶然以外のなんでもない。
一緒に帰ってたわけでもないし。
お互い特別な好意を抱いていたわけでもない。
<<やったれ切島ァ!麗日の仇だぁあ!!>>
<<やるならちゃんとやれよ…>>
いつも一緒に帰るおまえらを見て思ってた。
ハイハイ、やっぱりなって。
皆は否定するけど、俺は結構お似合いな2人だと思ってたから。
<<爆豪の爆破は、切島の硬化を破ることはできんのか!!?さてどうなる、どっちが倒れんのが先だ!?俺的には、切島に頑張ってもらいたいところ!!>>
<<おい、いい加減にしろ>>
頭小突かれたって、怒鳴られたって。
あいつはいつも楽しそうだった。
懲りればいいのに、向は何度だっておまえに話しかける。
「……っ…オラオラどしたぁ!来ないならこっちから行くぞ!!」
「……ックソが…!死ねクソモブ野郎!」
「誰がモブだ、この爆発さん太郎がよぉ!」
まるで、ヴィランみたいな口ぶりでしか話さないおまえのことを、向は楽しそうに俺に話した。
『辛いものが好きなんだって』
『登山に行ったりするらしい』
何を、おまえに聞いたって。
おまえは、同じ質問を返しては来ないのに。
だから、俺はそんなあいつの言葉に軽く相槌を打って、いろんなことを問いかけた。
なら、向が好きな食べ物は?
じゃあさ、向は、いつも何して過ごしてる?
だって、悲しいじゃんか。
相手に興味を持つのが自分ばっかりで。
けど相手は自分のこと、何一つ聞いてはくれないなんて。
「…っ俺はな、爆豪…!」
隣の席じゃなくたって。
一緒に帰ってなくたって。
俺はおまえよりあいつを知ってる。
それだけだ。
俺がおまえに勝ってるのは、それだけ。
「……本当はずっと、おまえと殴り合いたいと思ってたんだよ!!足りねぇんだよなぁ!!知ってるだけじゃ!!おまえに、勝って!!俺は!!!」
あいつに