第26章 モブの隠し事
「えっ、マジか!見とけよおまえら!」
と切島がため息をつき、「ん?」とまた爆豪に向き直った。
「なんで園庭に」
「……なんでもなにもあるかよ」
「えっ、なんで?二人?」
「………………あ?」
珍しく食いついて来る切島に、爆豪がハッと嘲るような笑みを浮かべて答える。
「二人きりだ、バァーーカ」
「…ははぁ、なるほど?だから向は俺に嘘ついたわけか」
「…嘘?」
「とても良い勝負だったって、言ってたんだけど。なんだよ見てないのかよ」
「ハッ、あんな地味な殴り合い対決のどこが良いんだよ」
その、瞬間。
ムッと切島が口をつぐんだ後、いつもより少しトーンを下げて、声を発した。
「……まっ、別にどうでもいいけど。向とマック行った時、バトルの講評聞いて困らせてやろっと」
「………………は?」
「すぐ謝ってきたら許してやるけど、案外あいつサラッと嘘貫き通しそうだし…あっ、ごめんこっちの話な」
「おいコラ、なんの話だ」
「なんだっていいだろ、おまえには関係ないし」
「えっ、切島深晴とマック行くん!?なんだそれ聞いてねぇぞ!!」
「言ってねぇもん。おまえら誘おうかと思ってたけど、思えばおまえらすぐ大声で怒鳴ったり叫んだりするし、向と二人で行った方が絶対楽しい」
「てめェ…どういうつもりだ!」
「どういうつもりもこういうつもりもねぇよ」
<<向強いーーー!!塩崎、なす術なく場外!!>>
そのアナウンスを聞き、切島がガンを飛ばして来る2人に背を向け、歩き出した。
「塩崎さん、場外!向さん、3回戦進出!」
ミッドナイトが審判を下した後。
青筋を浮かべる爆豪に、振り返った切島が喧嘩を売る。
「男なら、戦って勝ち取ってみろ!」
「………望むところだ切島ァ…!」
ガッと座席から立ち上がった爆豪が、切島と競うように選手控え室へと向かっていく。
取り残された上鳴は、一部始終を見ていた蛙吹と見つめ合い、呟いた。
「…え、俺はどっちにしろハブ?」
「ケロ、どっちかというとただのモブ」
ハブの方がいい!!と叫んだ上鳴の奥で、観客席に駆け込んできた轟の姿が、蛙吹の視界に映った。
「…………ケロ……?」