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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第25章 仲良しだから




「あー、結構前の方席埋まってんな」
「お!切島!二回戦進出やったな!」


沸き立つ観客席へと切島に連れ戻された向を発見し、上鳴が自分の左隣に座る瀬呂に「ちょい二人分詰めて」と声をかけた。


「次おめーとだ爆豪!」
「ぶっ殺す」
「ハッハッハやってみな!」


暴言を手慣れたようにサラッと笑い飛ばした切島は、上鳴が空けてくれた二つ分の座席を眺め、一考する。


(…上鳴の隣か、八百万の隣)


すっ…と上鳴の隣に向かって身体を向けた切島に、上鳴がメンチを切ってくる。
完全にこいつ友情より彼女を取るタイプだな、と上鳴にレッテルを貼り、切島が八百万の隣へと腰掛けた。


「深晴、ここ空いてる!」


(空けたんだろ!)


ちゃっかり偶然を装って向に隣の座席を勧めた上鳴にツッコミをいれたくなるが、切島はグッとこらえた。
はー、とため息を吐きながら、切島が思い出したように、少し離れた位置に座る爆豪に話しかける。


「…とか言っておめーも轟も、強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー…」
「ポンポンじゃねぇよナメんな」
「ん?」
「筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息切れる。「個性」だって身体機能だ。奴にも何らかの「限度」はあるハズだろ」
「考えりゃそりゃそっか…じゃあ緑谷は瞬殺マンの轟に………ん?」


切島と話しながら歩いてきていた爆豪が、上鳴の目の前で立ち止まった。
「おしるこ好きなん?」と気付かず向に話しかけ続けていた上鳴が、視界の端に映ったクラスメートにようやく目を向ける。


「どけや」
「は?なんで?」
「…………」
「なんでですかぁ爆豪くん、どうしてですかー、なんでどうしてどうしてなんで俺が君のために座席を移動しなきゃいけなごめんなさいごめんなさい殴らないでやめてやめてヤメテ!!!」


上鳴の胸ぐらを掴んで、座席から引っ張り上げた爆豪と、向の目が合う。
何も言わず。
ただじっと。
爆豪は、そんな目をして向が見つめてくる時は、大抵相手を値踏みしている時だと知っている。


「……ッ深晴」
『はい、どうしました爆豪くん』
「……あっちの……」
『はい』





あっちの、二人で座れる座席へ行こう





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