第25章 仲良しだから
緑谷・轟戦が始まった直後。
手近な場所に、二つ並んで空いた座席がなかった為、爆豪の後ろに座っていた向が席を立った。
「お、向。控え室行くのか?」
会場から出ようとした彼女より先に、相手の姿を見つけた切島が駆け寄ってくる。
『…あー。そう』
「なんだよ、その歯切れの悪い答えは。もう始まってる?」
『うん、ついさっきね。鋭児郎お疲れ』
「おぅ、サンキュー!どうだった?」
感想を求められ、また歩き始めようとしていた向は、グッと足先に力を入れて踏みとどまる。
『……あぁ!とてもいい勝負だったね!』
「いやー危なかったぜ!B組のやつ大分手強くてさー、お前は一回戦、ちょっと手ぇ抜くくらい余裕あったよな。次B組の女子と戦って、今戦ってる二人の勝った方と、準決勝か?」
『うん、そうなんだ!じゃあ私はこれで』
にこやかな笑顔を浮かべたまま、早々に背後を向けて立ち去ろうとする向の肩を、切島が掴む。
「見てった方がいいぜ絶対!緑谷が轟とやるなら、どうせまたステージぶっ壊れて待ち時間出来るだろうし」
『………そうかな』
「そうだって。たぶん勝ち上がんのは轟だろうから、攻略法一緒に考えよう!俺、どっちかっていうとお前に決勝残って欲しいしさ。それともなんか見たくない理由でもあんの?」
真顔に戻った向と、柔らかい笑みを浮かべる切島が見つめ合う。
彼女は少し何かを考えた後、またいつもの食えない笑みを浮かべた。
『…ありがとう』
「お礼なんかいいって!お前の方が轟より話すし、当然っつーかさ。そうだ、体育祭終わったら俺と爆豪と、上鳴とおまえでどっか飯食いに行こうぜ!」
『えっ!!…放課後マックで談笑してみたいです』
「うぉ、目がマジだな…じゃあ今日、体育祭終わったらマック行くか!」
『えっ、本当…?本当に?』
「あはは、嬉しそうだなー変な奴。むしろマックでいいのかよ?」
『マックがいい』
「じゃあ行こうぜ!爆豪と上鳴にも俺から話しとくから!」
『うん!じゃあ、あとでね』
タッと観戦席に向かって歩いて行こうとした切島が、ハッとして振り返る。
「だから見てけって!」
『……チッ』
切島にガシィッと肩を掴まれた向は舌打ちを隠さず、少しふて腐れたように切島と同方向に歩き始めた。