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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第24章 おまえと一緒




<<一回戦最後の組だな…!中学からちょっとした有名人!!堅気の顔じゃねぇヒーロー科、爆豪勝己!!バーサス!俺こっち応援したい!!ヒーロー科、麗日お茶子!!>>


一回戦目、第8組目。
爆豪・麗日のバトルが始まるアナウンスを受けて、会場から出ようとしていた轟は足を止めた。


(…間に合わねぇ)


やはり、飲み物を買いに行くのは後にしようと、近くの壁にもたれかかって、会場を見下ろした。





ーーー良い加減、子供じみた反抗をやめろ。おまえにはオールマイトを超えるという義務があるんだぞ





「……っ」





ーーーわかってるのか?兄さんらとは違う、おまえは最高傑作なんだぞ!







あぁ、うっとうしい。
また頭の中にアイツの声が反芻する。
イラつく。
ついさっきまでは、穏やかな気分だったのに。
こんな体育祭、何も楽しくなんかない。
プロヒーローの目にとまりたいなんて、そんな理由で張り切っているお気楽な連中が妬ましい。
振り切っても振り切れない、首筋にずっと絡みついているような煩わしいアイツの視線が頭から離れない。








『焦凍』






不意に、鈴を転がすような声が聞こえた。
轟は我に返って、すぐ隣に立っていた彼女に目を向けた。


『ごめん、予想大はずれだった。もう一回戦最終組、始まっちゃったみたい』
「………あぁ」


轟は自分の右手に違和感を感じて、左側に立つ向から見えないように、自分の身体の陰に右腕を隠した。


『良ければ私が選んで買ってこようか』
「…いらねぇ。これが終わったらすぐ控え室に行く」
『そう?』


気まずい沈黙に、なんの話題を探せばいいのかわからず。
轟は何食わぬ顔で、また会場へと視線を戻した。
右腕の拳の中では、無意識のうちに凍らされてしまっていた向の小銭が、じんわりとした痛みを彼の手のひらに与え続けている。


『焦凍』


また名前を呼ばれ、轟はピクッと肩を揺らし、素知らぬ顔を貫き通す。


「…なんだ」
『気晴らしでもする?』


会場で麗日相手にも容赦なく、爆発を起こし続ける爆豪を見つめて。
向は轟に提案してきた。
その横顔を眺めながら轟はまた一瞬言葉に詰まり、結局何も、言葉にすることのないまま。


「……。」


深く、深く、息を吐いた。

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