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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第22章 身を立て名を上げ、やよ励めよ




高校に入って、僕の初めての担任は


「担任の相澤消太だ、よろしくね」


最高峰のヒーロー育成学校の教師とは思えないほどに、見た目も、言動もくたびれた人で。
自分のことにも、周りのことにも無関心。
彼の風貌から、僕はそんな第一印象を抱いた。


「1票…!わかってはいた!!さすがに聖職といったところか…!!」
「他に入れたのね…」
「おまえもやりたがってたのに…何がしたいんだ飯田」


小学校では児童会長兼学級委員長。
中学校では生徒会長兼学級委員長だった僕が、高校で初めて、学級委員長の選挙に落選した。


(…けれど、僕に1票、誰かが投じてくれたということか)


みんな、自分のために、自分の1票を入れたはず。
黒板に書き込まれたクラスのほぼ全員の名前の横に、1票ずつという均等な結果が表れているのを見て。
僕は数人しかいない、黒板に名前がないメンバーの中から、思い当たる人物に声をかけた。


「ありがとう、麗日くん!たとえ1票でも、自らの身を投げ打ってまで、俺に与えてくれた君の思いは受け取ったぞ!」
「うぇ?…あー、お、おしかったね!」
「あぁ!」
「じゃあ委員長緑谷、副委員長八百万だ」


先生からのその発表に、僕は悔しさを必死に堪えながら、席へとついた。
その日の午後は、ヒーロー基礎学の枠を使って、他の委員を決めることになった。
昼休みのマスコミ騒動で、緑谷くんの目に止まる行いをしたらしい僕は、投票で委員長に就任した彼の提案により、やや八百万くんに申し訳ない形で学級委員長に指名された。


「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」
「任せたぜ非常口!!」
「非常口飯田!!しっかりやれよー!!」


そして、他の委員を決めるために、教壇からクラスを見渡していた僕は、どの委員にも手を挙げることのなかった2人の生徒に興味が湧いた。


「向くん」
『…ん?』
「良かったのか、どの委員にも立候補しなくて」


帰り際。
ヒーロー基礎学で何度か言葉を交わした向くんに、まず声をかけた。
彼女はいつものように笑みを浮かべ、僕に返事を返した。


『天哉、委員長おめでとう』
「あぁ!俺に1票を投じてくれた、麗日くんの期待に応えられて良かった」
『……ん?』


そのあと。
彼女は笑ったまま、僕に手を振って。
また明日ね、なんて言葉をかけてきた。

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