第21章 仰げば尊し、我が師の恩
<<ザ・中堅って感じ!?ヒーロー科、飯田天哉!バーサス!CMオファーが殺到しそう!!同じくヒーロー科、向深晴!>>
マイクのアナウンスにより、午後の本戦トーナメント、4組目のガチンコバトルが開始される。
トーナメント表によれば、この試合を制したものが3組目で勝ち上がったB組塩崎と対戦、さらに勝ち進めば緑谷・轟戦の勝者とバトル、さらにさらに勝利を重ねると、Bブロックトーナメントの決勝進出者とのバトルを行うこととなっている。
「…向くん、まさか、君と戦うことになるとはな」
『そうだね。これじゃ、否が応にも天哉を見てなきゃいけないね』
「そのちょっと嫌そうな表現はなんなんだ!?」
『ちょっと嫌だからさ』
「ちょっと嫌なのか!!」
『ちょっとだけね』
向は少しずるい顔をして、両手を大きく左右に広げた。
「!?」
突如、飯田が地面から跳ね上がり、宙高く飛ばされる。
(マズイ、操られたら最後だ!)
おそらく、飯田と地面の「反発力」を向はいじったのだろう。
飯田の膝には跳び上がった際結構な衝撃が加えられ、じぃんとした痛みが残る。
「エンジン!ブースト!」
エンジンを起動させ、飯田が空中で体勢を保ちつつ、地面へとしっかり着地した。
稲妻の様に飛び出していた向の肘打ちが、落下直後の飯田のみぞおちへと打ち出される。
「っ…!」
ドッ、とまともに食らったボディへの衝撃に、飯田が咳き込み、すぐさま向と距離を取る。
エンジン音を響かせながら会場を駆け回る飯田を、宙を舞う向が冷静に追いかけ、確実に重たい一撃、一撃をぶつけてくる。
(手荒な真似はしたくない…!女性を殴るなど、戦いとはいえ僕にはできない)
そんな甘さを見抜いてか、向は遠距離攻撃よりも近距離攻撃を優先し、懐へ飛び込んできては、飯田の体勢を崩すのを目的とした挌闘技をしかけてくる。
「動きを止めたが最後…!君の個性で場外まで投げ出されて、終わりか!」
『その通り』
飯田の目の前で不敵に笑ってみせた向は、次の瞬間には飯田の背後へと現れ、加速して蹴りを喰らわせる。